上田仁 指揮 東宝交響楽団(後の東京交響楽団)との共演。既述したが、アセテート盤による劣悪な録音からのCD。部分的にはとてもよく聞こえるも、やはり全体に鑑賞にはきつい。
ただ彼女がどういう解釈で挑んだのかはとてもよくわかる。クナッパーツブッシュ、ベルリンフィルとの共演から6年後の録音(1949年)、諏訪根自子29歳。
16歳からの10年間、残念ながら後半は世界大戦に巻き込まれ、時には裸足で爆撃から逃げ、壕でじっと耐えた彼女。ヴァイオリンを入れたケースだけは死守した。
終戦、彼女はベルリンからザルツブルグへ。飛行機でフランス経由でニューヨークへ。そこから日本行きの軍用船に乗って1年かけての帰国。
それは奇跡的な帰国だったようだ。帰国して3年、まだ荒廃している日本で彼女は再びブラームスに挑んだ。