(よみうりランドジュエルミネーション・噴水ショーより 12月19日撮影)
山梨工場勤務から1年ほどで上司の課長が交代となりました。新しい課長は購買部門内ではなく、他部門からでした。
このため、購買業務の手続きについては、私が教える立場となりました。もっとも、新しい上司は室伏さんと言いましたが、この室伏さん、私の社会人人生では、仕事上の先生の一人として、尊敬する存在となりました。
上司は、元は設計部門に所属し、見積業務を担当していました。ここで言う見積とは、製品の原価を算定する業務をさしています。会社としての利益計画の基となる原価を算定する重要な業務です。
部品費や組立費用などを集計することで、一つの製品の原価が計算されることになります。このため、購買部門と見積部門は仕事上の繋がりがあり、見積部門からは部品単価の問合せがありますし、購買部門も新規の購入部品については、事前に見積部門に予定価格を聞いておいて価格交渉の参考にもします。交渉で予定価格を下回れない場合は、見積部門の承認が必要にもなりました。
本社の資材部にいた時に当時の室伏さんとのやり取りが多かったのですが、特に、「原価低減プロジェクト」が出来、二人がそのメンバーに入った時には原価算定の方法など詳しく教えていただきました。
すでにご紹介の生産管理マニュアルにも「原価管理」の説明がありますが、この内容のかなりの部分は、この時の室伏さんからの教育の結果でもあるわけです。
それと、上司になってから教えられたことは「仕事は誠実に!」ということです。
上司と部下としての山梨工場での直接の関係は、結果として1年だけだったのですが、その間に忘れられないことが一つあるのです。それは外注との関係でした。
ある外注からの納入部品に不良が発生したのです。組立時にその部品が割れるという不良です。しかし、納入部品を図面と照合すると図面の指示どおりです。したがって、図面上は不良ではないのです。
このため、外注より再納入させ、テストしてみましたが、やはり組立で割れてしまったのです。
こうなると、外注は力関係でどうしても、不利になります。社内の各部門からは購買に圧力がかかります。「外注先」の変更要求があったのです。私もしかたがないと思っていました。
しかし、新上司の対応は違っていました。「図面どおり出来ているので不良ではない」と突っぱねたのです。これも、後のテストで分かったことですが、図面指定の材料に問題があったのです。材料変更で問題は解決したのです。
さらに、上司は社内稟議を書いて、不良となった部品代も外注での在庫分も含めて買い取る処理をしたのです。
今の時代なら、下請法の厳しく適用される事案ですが、もう40年近い昔のこと、まだまだ下請けいじめが当たり前の時代でしたから、他の上司なら、なあなあで済ませてしまった事案だった気がします。
「誠実な仕事」、その後の私はそうできたかは甚だ疑問ですが、何か問題があると、同じような事案ではなくてもこのことを思い出すようにしていました。
(おわり)