意志とは
イタリアの精神科医であるロベルト・アサジオリーは、彼の著書『意志のはたらき』の中で、次のように書いています。「私たちが自分の意志に気づくのに最も身近で簡単な方法としては、断固として行う行為や、争いをとおしてのものがあります。私たちが肉体的あるいは精神的に頑張るときや、何か障害になるものや力に打ち勝とうと頑張っているときに、私たちは自分の中から湧いてくる特別な力を感じます。この自分の中にあるエネルギーによって意志を体験できるのです。自分の中の意志の発見、さらには自己(セルフ)と意志が密接につながっていることへの気づきは、一大変化をもたらします。この変化により、私たちは、自分自身や他人、世界に対してのとらえ方が変わるのです。このせっかくの気づきを確実に自分のものにし、その偉大な力を活用するために守り、育て、強化していく必要があることは明らかです 」アサジオリーの言う意志は、従来考えられているような何かの目的のために人格のさまざまな面を抑圧したり、否定したりするものではありません。人間のあらゆる行為や、エネルギーを抑圧せずに、バランスを取りながら建設的に活用する働きであり、方向づけ、調整する機能なのです。それゆえ、意志を使うことはすべての活動の基本であり、それなりの努力や持続性によって意志を発達させることは、将来のあらゆる努力の成果をずっと豊かにしてくれます。つまり、私たちが自己実現レベルの全人的、健全な人間としての成長をするには、セルフによる気づきだけでなく、気づいたものを意志によりコントロールして、日常生活で実践し根づかせる必要があるわけです。周りの力に振り回されず、あらゆることを自ら選択する自由を得ることは、厳しい責任を伴うとしても、大きな喜びと満足感をもたらします。セルフの働きを助け、人間的成長をより確かなものにするためには、まず意志の存在を認識し、そのような意志を自らもっていること、そして自らが意志そのものであることに気づくことが必要であり、そのうえで意志をより強くするとともに、より有能で巧みなものにすることによって、自分にも他人にも善いものにしていくことが大切です。
意志発揮の3側面
自分自身が意志をもち、意志こそ自分の本質であることを認識することが、その人の行動のかぎになる。、私たちは、生活のあらゆる場面で適切に意志を活用できるように3つの意志をバランスよく守り育てていくことが大切であると指摘している。
1、強い意志(Strong will)
強い意志の側面は、一つのことをしつづけるとか、決めたことを必ず実行するとか、断固として闘うとか、苦しみや困難に打ち勝つといった、従来使われている意志に最も近い側面である。
■頑張る ■闘う ■やめる(勇気ある撤退)■断固たる抵抗、拒否 ■継続(一貫性)■耐え忍ぶ ■完遂 ■挑戦 ■粘り強さ ■努力 ■信念■その他のキーワードとして、「実行」「強さ」「決意」「果断」「敢然」などがあげられる
活用例 「面倒くさがり屋」を持ちながらも課題達成のため「ガンバリ屋」のカードを切る。「心配屋」を持ちながら「チャレンジヤ‐」のカードを切る
2、巧みな意志(Skillfull willl)
巧みな意志の側面は、最小のエネルギーによって望む結果を得るために、どうしたらよいか熟慮するといったときに発揮される側面である。自分の性格や能力に最も適した方法で何かを身につけるとか、相手の特性を吟味して対応するとか、無理やむだをできるだけ省くなどは、日常よく経験するところである。
■効率性 ■計画性 ■知恵を使う ■工夫 ■タイミング ■気分転換■その他のキーワードとして、「臨機応変」「熟考」「吟味」「柔軟性」「効果性」などがあげられる。
活用例 「面倒くさがり屋」が出てきたときは、まず「面倒くさがり屋」のSPを満たすため気分転換を図る。そして「ガンバリ屋」のカードを切り課題の達成を図る。「心配屋」のカードを最小限にするために誰かと一緒に「チャレンジ」「実践」する。
3、善い意志(Good Will)
善(よ)い意志の側面は、いくら意志が強くたくみでも十分とはいない。極端な場合、悪い目的に利用されると深刻な社会問題や悪事、戦争などに結びついてしまう。何か行動を起こすとき、その目的が、自分にとっても相手や周りにとっても、心地よさ、安心、満足、幸福などをもたらすものであることが大切である。善い意志は、このように自他(大きくは地球を含めて)にとってより良い方向性を示してくれる側面です。
■他者の役に立つことをする(思いやり)■他者の相談に乗る ■他者の仕事を手伝う ■周囲にとって役立つことをする ■相手を大切にする ■心身を大切にする(健康管理)■家族を大切にする ■迷惑をかけない■地球環境を大切にしている■その他のキーワードとして、「協調性」「親和」「支援」「貢献」「奉仕」などがあげられる。
●あなたの「善い意志」のSPの活用事例
活用例 「気分屋さん」を持ちながら相手のために「誠実さん」のカードを切る。「面倒くさがり屋」を持ちながらチームや家族のために「努力」のカードを切る。
「人間力を高めるセルフ・エンパワーメント」 八尾芳樹 角本ナナ子より引用。一部筆者加筆
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます