舞台俳優で演出家の家福悠介は、妻の音と穏やかで満ち足りた日々を送っていた。しかしある日、思いつめた様子で“今晩話がしたい”と言っていた音は、家福が帰宅する前にくも膜下出血で倒れ、そのまま帰らぬ人となってしまう。2年後、『ワーニャ伯父さん』の演出を任された演劇祭に参加するため愛車で広島へ向かう家福は、寡黙な女性みさきを専属ドライバーとして雇うことに。やがて様々な国から集まったオーディション参加者の中に、かつて音から紹介されたことのある俳優・高槻耕史の姿を見つける家福だったが…。
Blu-ray ★★★☆
村上春樹の原作は「文藝春秋」に掲載されたときに読んで、文庫本化されたときに読んで。文庫本で50ページほどの作品がどうして3時間もの映画になるのかな?って思いました。本来なら原作を忠実に映像化し、90分ほどの映画にしても良かったと思うのですが。
で、原作と映画が全く違うということはよくある話ですが、あの原作をこんな風に映画化するのかということに「いい意味で」衝撃を受けました。
原作はまず主人公が車の事故を起こし、しばらく運転できないために自動車修理屋さんにドライバーを探してもらうところから始まりますが、映画の方は時系列で話が進みます。また、主人公の車の色が原作では黄色、映画では赤・・・これはおそらく撮影で使える黄色のSAABが無かったのでしょうね。また主人公の妻の死因が原作では子宮がん、映画ではくも膜下出血ですし、ドライバーとなる女の子の母親の死因が原作では飲酒運転による事故、映画では土砂崩れによる家の崩壊でした。
こういう細かいことは気になるといえば気になりますし、どうでもいいといえばどうでもいいことかもしれません。ただ、一番驚いたのは、原作にはない「舞台」のシーンやそのオーデションから稽古のシーン、出演者たちとの話などが物語の半分以上を占め、この舞台での演目「ワーニャ伯父さん」こそが主人公自身であることも感じさせられます。
原作はとても乾いていましたが、映画はめちゃウェットでした。
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