国葬、五輪汚職に菅前首相の恨みも…岸田政権“終末”への五重苦
2022/09/07 07:00 (AERA dot.)
森喜朗元首相
旧統一教会問題への対応で国民の反感を買い、支持率が急落した岸田文雄政権。旧統一教会と「関係を断ち切る」と宣言したものの、どこまで断絶できるか疑わしさも指摘されている。
* * *
岸田自民党が抱える難題は旧統一教会問題以外にもまだまだある。
国葬については、費用として閣議決定された約2億5千万円以外に、警備費や海外要人の接遇費がかかる。岸田首相は「計上している既定予算の範囲内で対応する」と説明するが、経費の事前公表は見送った。総経費は「数十億円」から「100億円超」との報道もあり(9月6日、政府は総額が16億6000万円程度になるとの見通しを示した)、ある自民党議員は「閣議決定で決まった以上、きっちり説明を行わないとこれまで以上の逆風となる恐れがある。国葬は諸刃の剣だ」と警戒する。
期待された「弔問外交」ではマクロン仏大統領、メルケル前ドイツ首相ら“大物”が次々と欠席を表明。G7のうち、首脳の出席はカナダのトルドー首相ただ一人になりそうだ。こうなると、巨額の予算を投じる意義にますます疑問符がつく。
安倍氏が生前、強く求めていた防衛費増額については、防衛省が8月31日、来年度の予算編成に向けた概算要求で過去最大の5兆5947億円を要求した。水面下の与党要求を足し上げただけでも「8兆円」(防衛相経験者)とみられていただけに抑えた感じもするが、概算要求時に内容等が決定していない事項について金額を示さずに要求できる「事項要求」は約100項目に達した。政府関係者は実情をこう語る。
「今、政府内で検討されているのは、国防予算を対GDP比2%以上とするNATO(北大西洋条約機構)基準に5年以内に合わせる案で、そうすると防衛費は約11兆円程度にまで増える計算になる。来年度予算は概算要求の金額に敵の射程圏外から攻撃する『スタンド・オフ防衛能力』や無人機などの新規装備の調達を上乗せし、総額を7兆円未満に抑えられるかの攻防になる見通しだ」
増額分の財源については「防衛国債」の発行も検討されているが、国の借金は6年連続で最大を更新して1241兆円に達している。これにさらに防衛国債を発行すると、他の財源にとばっちりがくるのは確実だ。
実際、社会保障関連については、10月から75歳以上の後期高齢者の医療費の窓口負担が、一部で1割から2割に上がる。さらに、1カ月当たり80万円を超える高額な医療費が発生した場合、その一部を国が負担する国民健康保険の「高額医療費負担」制度について、財務省が「廃止に向けた道筋を工程化すべき」とする調査結果を発表。国の負担分を都道府県へ移行するという趣旨ではあるものの、ネット上では今後も制度を維持していけるのかについて不安の声もあがっている。
■菅前首相が抱く岸田氏への私怨
国民生活に直結する問題が物価高だ。
「7月の全国消費者物価指数(生鮮食品を除く)は前年同月比2.4%上昇し、4カ月連続の2%超え。国民からすると、給料が上がらないのに物価高では生活が困窮する。特に電気・ガス代や食料品価格の高騰が続き、政府にとっては大きな懸念材料だ。家計への影響が大きすぎる。現状のまま継続した場合、電力不足も重なれば、国民の不満が爆発する」(シンクタンク関係者)
政府は当面、今年度予算で計上した5.5兆円の予備費を物価高対策に使う方針だが、世界的なインフレ、円安状況に陥り、「国債の金利が上昇して財政が一気に悪化する恐れもある」(経済官庁の中堅官僚)という。
政権をさらに揺るがす「爆弾」になる可能性があるのが、東京五輪を巡る汚職事件だ。贈賄容疑で逮捕された紳士服大手「AOKIホールディングス」前会長の青木拡憲容疑者が東京地検特捜部の調べに対し、大会組織委員会の会長だった森喜朗元首相に「現金200万円を手渡した」と供述していると報じられた。政界関係者はこう語る。
「森氏への現金手渡しの件が報じられたのは、特捜のリークではないか。組織委元理事で受託収賄容疑で逮捕された高橋治之容疑者とつながる現職政治家にも捜査の手が伸びるのではないかと、東京五輪に関わりの深かった政治家の実名が飛び交っており、永田町は戦々恐々としています」
旧統一教会、国葬、防衛費増額、物価高、五輪疑惑──五重苦とも言える難題の一つでも対応を誤れば、岸田政権はさらなる窮地に追い込まれる。
岸田首相は最大派閥の安倍派に対抗して党内基盤を強化するため菅義偉前首相を副総理として迎える案を検討していたが、安倍氏の死去で菅氏優遇も不要となり、河野太郎氏の入閣など菅氏周辺を切り崩すことで政権を安定化させた経緯もある。「菅氏は岸田首相に私怨に近い感情を抱いている」(菅氏周辺)とされ、9月1日夜には同じ非主流派の二階俊博元幹事長と会食するなど、永田町がざわついた。今後の展開次第では「岸田降ろし」が始まる可能性もある。
首相は聞く力だけでなく政治家の要諦である「言葉」でもって数々の難題の説明責任を果たさなくてはならない。(本誌・村上新太郎)
※週刊朝日 2022年9月16日号より抜粋
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岸田自民党が抱える難題は旧統一教会問題以外にもまだまだある。
国葬については、費用として閣議決定された約2億5千万円以外に、警備費や海外要人の接遇費がかかる。岸田首相は「計上している既定予算の範囲内で対応する」と説明するが、経費の事前公表は見送った。総経費は「数十億円」から「100億円超」との報道もあり(9月6日、政府は総額が16億6000万円程度になるとの見通しを示した)、ある自民党議員は「閣議決定で決まった以上、きっちり説明を行わないとこれまで以上の逆風となる恐れがある。国葬は諸刃の剣だ」と警戒する。
期待された「弔問外交」ではマクロン仏大統領、メルケル前ドイツ首相ら“大物”が次々と欠席を表明。G7のうち、首脳の出席はカナダのトルドー首相ただ一人になりそうだ。こうなると、巨額の予算を投じる意義にますます疑問符がつく。
安倍氏が生前、強く求めていた防衛費増額については、防衛省が8月31日、来年度の予算編成に向けた概算要求で過去最大の5兆5947億円を要求した。水面下の与党要求を足し上げただけでも「8兆円」(防衛相経験者)とみられていただけに抑えた感じもするが、概算要求時に内容等が決定していない事項について金額を示さずに要求できる「事項要求」は約100項目に達した。政府関係者は実情をこう語る。
「今、政府内で検討されているのは、国防予算を対GDP比2%以上とするNATO(北大西洋条約機構)基準に5年以内に合わせる案で、そうすると防衛費は約11兆円程度にまで増える計算になる。来年度予算は概算要求の金額に敵の射程圏外から攻撃する『スタンド・オフ防衛能力』や無人機などの新規装備の調達を上乗せし、総額を7兆円未満に抑えられるかの攻防になる見通しだ」
増額分の財源については「防衛国債」の発行も検討されているが、国の借金は6年連続で最大を更新して1241兆円に達している。これにさらに防衛国債を発行すると、他の財源にとばっちりがくるのは確実だ。
実際、社会保障関連については、10月から75歳以上の後期高齢者の医療費の窓口負担が、一部で1割から2割に上がる。さらに、1カ月当たり80万円を超える高額な医療費が発生した場合、その一部を国が負担する国民健康保険の「高額医療費負担」制度について、財務省が「廃止に向けた道筋を工程化すべき」とする調査結果を発表。国の負担分を都道府県へ移行するという趣旨ではあるものの、ネット上では今後も制度を維持していけるのかについて不安の声もあがっている。
■菅前首相が抱く岸田氏への私怨
国民生活に直結する問題が物価高だ。
「7月の全国消費者物価指数(生鮮食品を除く)は前年同月比2.4%上昇し、4カ月連続の2%超え。国民からすると、給料が上がらないのに物価高では生活が困窮する。特に電気・ガス代や食料品価格の高騰が続き、政府にとっては大きな懸念材料だ。家計への影響が大きすぎる。現状のまま継続した場合、電力不足も重なれば、国民の不満が爆発する」(シンクタンク関係者)
政府は当面、今年度予算で計上した5.5兆円の予備費を物価高対策に使う方針だが、世界的なインフレ、円安状況に陥り、「国債の金利が上昇して財政が一気に悪化する恐れもある」(経済官庁の中堅官僚)という。
政権をさらに揺るがす「爆弾」になる可能性があるのが、東京五輪を巡る汚職事件だ。贈賄容疑で逮捕された紳士服大手「AOKIホールディングス」前会長の青木拡憲容疑者が東京地検特捜部の調べに対し、大会組織委員会の会長だった森喜朗元首相に「現金200万円を手渡した」と供述していると報じられた。政界関係者はこう語る。
「森氏への現金手渡しの件が報じられたのは、特捜のリークではないか。組織委元理事で受託収賄容疑で逮捕された高橋治之容疑者とつながる現職政治家にも捜査の手が伸びるのではないかと、東京五輪に関わりの深かった政治家の実名が飛び交っており、永田町は戦々恐々としています」
旧統一教会、国葬、防衛費増額、物価高、五輪疑惑──五重苦とも言える難題の一つでも対応を誤れば、岸田政権はさらなる窮地に追い込まれる。
岸田首相は最大派閥の安倍派に対抗して党内基盤を強化するため菅義偉前首相を副総理として迎える案を検討していたが、安倍氏の死去で菅氏優遇も不要となり、河野太郎氏の入閣など菅氏周辺を切り崩すことで政権を安定化させた経緯もある。「菅氏は岸田首相に私怨に近い感情を抱いている」(菅氏周辺)とされ、9月1日夜には同じ非主流派の二階俊博元幹事長と会食するなど、永田町がざわついた。今後の展開次第では「岸田降ろし」が始まる可能性もある。
首相は聞く力だけでなく政治家の要諦である「言葉」でもって数々の難題の説明責任を果たさなくてはならない。(本誌・村上新太郎)
※週刊朝日 2022年9月16日号より抜粋
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【速報】「事実があれば、党として議員辞職を求める」公明・熊野正士参院議員セクハラ報道受け 公明党コメント発表
2022/09/07 10:36 (TBS NEWS DIG)
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公明党の熊野正士参院議員が創価学会の女性信者にセクハラ行為をしたと一部で報じられた件を受け、公明党がさきほど「そのような事実があれば、党として議員辞職を求める」などとするコメントを出しました。以下、全文です。
わが党の所属議員が、昨日、ネットに掲載された週刊誌報道により、ご心配をおかけしていることについては、大変遺憾であり、党員・支持者をはじめ、国民の皆さんに深くお詫びを申し上げます。
週刊誌の報道にある熊野議員と当該女性とのLINEによるやりとりは、山口代表も北側副代表も、この週刊誌報道ではじめて知りました。
現在、熊野議員は入院中であり、報道された内容について本人に確認ができない状況でありますが、仮に事実であれば言語道断であり、公明党議員としてあるまじき行為です。
今後、本人に報道された内容について確認し、そのような事実があれば、党として議員辞職を求めてまいります。
なお、熊野議員は本件に関連し、入院前に弁護士を依頼しています。
同議員の代理人弁護士によると、「▼当該女性が主張することは、余りにも一方的で、事実経過と明らかに異なる。▼当該女性は、熊野議員に対し、妻と離婚することを執拗に強要しており、最近では期限を付して離婚するよう強く迫って、応じなければ週刊誌に情報を提供するなどと脅し、熊野議員は精神的にも極度に追い詰められていた。その結果、医師の判断により、入院・面会謝絶となった」との事であります。
また熊野議員の妻も、別の弁護士を依頼しており、当該女性への法的措置をとると聞いています。
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