今思うと、不思議な体験をしたことがある。2歳のとき母に連れられて品川区の大井町に住む母と同郷の知人(女性)のお宅に伺ったときのことだ。母と私と1歳年上の兄の3人で。
そのお宅には広い庭があり池があった。当時の品川は、今では考えられないような田舎びた風景だった。私は1人で庭を歩いていた。2歳の子供なので、足下には注意を払わずに歩いていたら、池にすっぽりと落ちてしまった。母は知人と、私が見える和室で、私の方に注意を払いながら世間話をしていたので、私が池に落ちたことに直ぐに気がついた。
2歳だった私の目には、なぜかそうした一連の光景が鮮明に写っていた。私が池に落ちるのを見るやいなや、母も知人も大慌てになった。母が私を池から引き出したところで、知人は風呂を沸かし、着替させることにした。知人のお宅には、私の兄より年上の男の子がいたので、兄にその子の服を着せ、兄が着ていた服を私に着せるという段取になった。私はここまでのことを、会話を含め鮮明に記憶している。
2歳の私が、なぜこの一連の光景や、会話を理解して記憶できたのか。しかも、2歳のときのことは、これだけしか記憶に残っていない、不思議だ。