今、日本で何かが起きようとしているのではないか。人間も動物。何か、動物的な勘が働く。得体の知れない不安。過去の経験から推し量れない未来。コロナが引き起こした違和感とでも言うようなものが、この世界を覆っている。
そんな今から、何十年か経過した、20××年。世界は、「人権」から「金権」の社会へと変貌した。個人の価値、権利は、個人が、いくら金を持っているかで決定される。国家は、株式会社となり、個人は、国家への出資額に応じた選挙権を持つ。富裕層が、実質的に国家を支配する時代。出資できない貧困層は、全ての権利を失い、奴隷化され、売買の対象となった。
金融犯罪は、厳罰化され、金額によっては、死刑が科される。一方、殺人、傷害、暴行など反道義性、反社会性を罰する刑事犯については、加害者が富裕層、被害者が貧困層の場合、情状によって処罰されないか、慰謝料の支払いで免責されるという異常な社会。とくに奴隷化された者に対する犯罪については、示談が横行し、正義など無いに等しい社会となった。
数で勝る貧困層は、激しく富裕層と対立。富裕層、金融機関、政府機関に対するテロ、暴力行為が頻発する。そして、いつの間にか、警察や軍隊の中からも、富裕層に敵対する者が増えた。富裕層は、貧困層や、造反した警察や軍隊に対抗するため、民間治安部隊を組織。それでも、政治、経済は崩壊し、無政府化した。巷には失業者が溢れ、富裕層の多くも貧困化。都市部は荒廃し、人が生活できなくなった。
政府は、20××年1月1日の午前0時から、「1カ月という条件付きで、全ての犯罪に対して、自力救済を公認する」という時限立法を提案。国会で承認され、施行されることとなった。この法律の狙いは、「富裕層及び民間治安部隊による、自力救済の名を借りた自警活動」を公認し、無力となった政府の代わりに、民活により治安回復を図ろうとするものだった。
20××年1月1日、午前0時を迎える頃、首相(社長)、大臣(取締役)、国会議員(大株主)は、国会に陣取り、固唾を飲んで、法律施行の時を待った。ところが国会は、警察、軍隊、民衆に取り囲まれた。一体、どうなるのだ、この国は。
【請うご期待】