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歩くと頭が空っぽになる
館林で 遠くの山並みを見ていたら
言葉が浮かぶ
山のあなたの空遠く 幸い住むと人の言う 我泣きぬれて蟹とたわむる
ブッセと啄木が仲良くなってしまう
なんで こんな風に浮かんでくるのかはわからない
自分でわからないのだから 妻に話してもわかるわけがない
記憶の配線の劣化だろう 多分
「風の中おのれをせめつつ歩く」山頭火
乞食行脚しながら 過去を振り返り
何故自分は歩き続けるのか 救いを求めても得られぬ
向かい風の中 自分へのその報いを かみ締めながら
しみじみと伝わってくる
「赤城下ろしの風に水っ洟たらして歩く」たか
東西南北 どっちへ向かって歩いても 路地を歩いて吹く風は真正面
半端な強さではない ほこりが目に入る
手はかじかむ 鼻水は知らないうちにたれてくる 涙は止まらない
ティッシュでポケットが膨らんでしまった
しみじみしたいのに しみじみどころではない
ここで一瞬風が止まった 日差しは柔らかいんだ
山茶花が吹き散らかっていた