ー 相続雑感 ー

周知のように、相続人になると、被相続人の貯金も借金も無条件で引き継ぐか(単純承認)、相続を拒否して相続人とならなかったことにするか(相続放棄)、あるいは遺産をプラス・マイナスして残りだけを引き受けるか(限定承認)の選択をすることになる(民法915条)。
相続放棄も限定承認もしないで3か月経つと貯金も借金も無条件で引き継いだものとみなされる(民法921条2号)。
だから相続人になると大変。大急ぎでプラスの財産はいくらあるか、マイナスの財産はいくらあるかを調べなくてはならない。
個人ローンを扱っている地銀などを片っ端から訪ねて回った友人がいたことは前に書いた。恐ろしく手間がかかったようである。
後でわかったことだが、地銀や信金の借金を調べるのにそんな手間をかける必要はなかった。東京・丸の内に「全国銀行個人信用情報センター」というのがある。ここに郵便で問い合わせればローンの契約内容や返済状況を教えてくれる。
地銀には何度となく足を運んで言われるままに戸籍謄本その他を提出したが、ついぞ同センターのことは聞かなかったという。地銀が知らなかったとすればお粗末の極みである。知ってて教えてくれなかったとすれば不可解である。
それはさておき、連帯保証については問題が残る。例えば、会社の借金を社長が個人保証することはよくある。この場合、金融機関がセンターにそのことを通知していないとセンターに問い合わせても「連帯保証人になっています」という答えは返ってこない。
相続人としては日頃付き合いのある銀行を見当つけて、行ってみるしかないのだろうか。
もうひとつの問題は知り合いからの借金である。借りたという紙切れ一枚でもあれば処置できるが、なければ、「貸した」「知らない」の水掛け論になりかねない。
放棄すれば、借金を調べて歩く面倒もない。
( 次回は ー ルーティーン ー )