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田舎ぐらし(194)

 ー 残っちゃった! ー

 

 人間、生きるために必要なものは何かと問われれば、たいてい衣・食・住と答える。
中学生にもなれば金 ー Money ー も必要だとわかる。もっと大人になって世間を知ってくると金さえあればなどと可愛げのないことを言うようになる。

 さてその金、生きるために必要だったわけだから死んだ後はいらないはず。三途の川の舟の渡し賃さえあればいい。

 問題は “ 残っちやつた ” 場合である。
話を簡単にする。“ そろそろかな ” という頃になって、例えば駅前の地銀の口座に1000万円の預金があるのがわかった。さてどうする? 自問した。

 最初頭に浮かんだ案は、自分が稼いだ金だ。好きにしよう。遺言書を書いて例えば老人ホームで親切にしてくれた誰々さんにあげようと決める。この場合はその人の了解を取っておくことが大事。辞退という場合もありうる。
 ただ困ったことには自分に子がいて、子が文句を言えば法的には一部の金が子に行くようになっている。遺留分である。
 
 次は遺言なんか書かないでさっさと “ 舟 ” に乗ってしまう。
どうなるか。残った家族が話し合って決める。話がまとまらなければ家庭裁判所に持ち込まれる。家庭裁判所は相続法に従って決めてくれる。

 さて、従来欧米では遺言をし、遺言通りに処理されるのが主流である。8.19 BS211で放映されたテレビドラマ「名探偵ポアロ」の「謎の遺言書」では大富豪が血のつながりのない使用人夫婦にまで現金を遺す遺言書を書いていた。自分がが稼いだ金は自分の自由に処分できるというのがあちら風の考え方のようである。

 これに対して、日本では国が世話を焼きすぎる。曰く相続人は誰々、各々の取り分はこれこれ。極めつけは子の遺留分。子にはやらないと言い残していても、これだけはあげなさいと強制する。
 後に残った者の生活保障のためとかなんとか理屈をいうが、そういうことはこれから “ 舟 ” に乗ろうという人間が考えることである。

 古来、児孫のために美田を買わず、という。自分が死んだ後には財産は遺さない。子や孫に金を残すとロクなことにはならないという戒めである。

こうなると、余人は知らず先の自問に対する答えは明らかである。


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