ちょっと前のWBSにこの本の著者が登場して、そこでWikipediaの話をしていたのが印象深かったのを覚えている。んで、そのときの話をもっと知りたくて、本書を読んでみたってわけ。
今、まさに起きていること(現時点では、すでに起きていたことか)が、いったいどういうことなのか、体系的にわかりやすくまとめてある。
それはタイトルにあるWebを巡ってのことなのだけど、もはやWeb――本書にならえば「あちら」の世界だけの話ではなく、すでに「こちら」の世界も大きく変容しているってことを気付かせてくれる。
たとえば自分の体験でいえば、かつては入手はおろか探すのも面倒だったマイナーな本を、現在はWebのショッピングサイト――本書に依ればAmazonなわけだが――を使えば、すぐに探し出して、その場で注文することができる。
本書ではロングテールの話が出てくるが、本書を読む前までは単純にニッチな商品の多売で売上を上げる――程度のことだと思っていたんだけど、本書のキーワードの一つである「不特定多数無限大」という視点で見ると、より理解が深まってくる。
本書にはないのだが「復刊.com」なんてのは、このロングテールにさえ無かった需要(モノがないから注文できなかった)を掘り起こすという意味では、さらに興味深いんじゃないかと思ったりした。
もう一つ、自分の体験に照らし合わせればブログによる総表現社会についても、かなり興味深かった。
そう、今、オレがこうやって書いている記事そのもののことなんだけど(笑)。
ブログを単なる横好き・暇潰しとしか解釈できない(解釈したがる)既存メディアに対する鋭い言説そのものが、総表現社会によって生まれた知恵なんじゃないか、と思ったりもした。
その他、いろいろ示唆に富む話がたくさんあるのだが、いちいち紹介しきれないので割愛。興味がある方は、目次だけでも眺めてみてください。
Webの世界は時の流れが速いので、堀江貴文が日本を代表する(ただし、Web2.0とは対極の)経営者として登場するのが微笑ましい。
また、Googleを褒めすぎるのにも、ちょっと違和感を覚えた。
Googleの一人勝ちの状況(2006年7月末時点)と、その影響力を考えれば仕方がないんだろうけど。
【Google決算、77%の増収】
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0607/21/news023.html
でも、Googleが中国政府の検閲に協力していることなんてのは、決して民主主義的とは言えないわけで。
(営利企業的ではあるけど)
【Google、Yahoo!、Microsoftの中国での活動を人権擁護団体が批判】
http://opentechpress.jp/enterprise/06/07/22/0434251.shtml
もうちょっとバランスの取れた記述にならなかったのだろうか――それは最終章の「はてな」についても言えるのだが――と思ったりもしたけど。でも、本書の本質はそこにはないのだから、まあいいかと思ったりもした。
ただ、発刊が2006年2月ということで、内容はすでに古くなりつつある。
Yahoo!もGoogle、Amazonも今でもサービスが変化しているし、Youtubeのことは触れられていない。
読む時期が遅れれば、本書は古典になってしまうかもしれない。
それでも「今、何が起きているのか(何が起きていたのか)」を知る、打って付けの教科書になると思う。
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