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同人サークルA-COLORが北海道をうろうろしながら書いているブログです

イエロー・ケーキ クリーンなエネルギーという嘘

2012-03-04 22:08:05 | 映画-2012年

0304 「知らないこと、知らされていないことが間違い」

シアターキノの「原発にたよらない未来へ―― 脱原発映画祭」に行ってきました。
その中の一作『イエロー・ケーキ クリーンなエネルギーという嘘』を見ました。

まず、最初にお断りしておきますがA-COLOR的には、このブログで原発がどうのこうのというアレやコレについて書くつもりはないです。
この映画を見た感想だけ書きます。

先週見てきた『愛と希望の炭鉱』をはじめとする記録映像が、かつての北海道の炭鉱(石炭鉱山)映画だとしたら。
今回の『イエロー・ケーキ クリーンなエネルギーという嘘』は、現在の世界を舞台にしたウラン鉱山映画です。
かつての東ドイツの坑内堀り鉱山の様子では、現役で稼働していた立坑櫓や坑内の様子が見られるし、現在のナミビアの露天掘り鉱山では巨大重機が疾走するド迫力なスケールの大きさが堪能できます。
そういう意味では、鉱山好きの人にとっては打って付けの鉱山映画といえるでしょう。

また、意図的かどうか分かりませんが、映画の作りがちょうど鉱山の発展から衰退までの流れと一致しているのも興味深かったです。
まず最初に、東ドイツの旧来式の坑内堀り鉱山から始まります。当時の活気のあった鉱山の様子が見られます。
東ドイツの鉱山閉山後、舞台はナミビアの露天掘り鉱山へ。ウラン鉱山はナミビアの経済を飛躍させ、そこで働いている人々、住んでいる街は生き生きとしています。
オーストラリアでの環境汚染と市民運動のエピソードを間に挟み。
カナダではウラン鉱山の閉山(市民運動とは無関係)とともに町がゴーストタウン化し、鬱蒼と生い茂る森の中に手つかずの鉱山跡が残されています。
鉱山と町の始まりから隆盛を経て衰退までが一気に見られるので、北海道の炭鉱街と見比べてみても、かなり興味深い内容だと思います。

これが炭鉱だったらノスタルジーに浸れる記録映画なんでしょうが……ここに映されるのはウラン鉱山です。

我々のような炭鉱遺産巡りをしている方々(そんなに多くないだろうけど)に想像してもらいたいんですが……。
夕張で楽しんだズリ山登山だけど、もしこのズリ山が放射能を放っていたら?
無邪気に見学して落ちている鉱石を拾っていたけど、もしこれが放射能を放っていたら?
シックナーがウラン精製時に出る排水を処理するものだったら?
カッコイイ重機だけど、放射能を除染をしないと外に持ち出せないものだとしたら?
この映画は、そういった問いを発しています。

ウランを含む鉱石は放射能に汚染されているんだそうです(どのように、どれだけ汚染されているのかは説明がなかったです)。
ウラン精製後に出るズリも放射能汚染された廃棄物なのですが、それらが石炭と同じようにズリ山を形成します。ドイツにはこういったズリ山が1000以上あるんだそうです。
閉山した鉱山会社は、国から大量の税金を投入してもらいながら、鉱山跡にズリを埋め戻す作業をしています。
かつての東ドイツでもナミビアの露天掘り鉱山でも、従業員達はウランについての知識は無く、普通の鉱山と同じように働いています(口を閉ざしているのかもしれませんが)。
露天掘りなので当然、屋外で発破作業も行います。放射能を含む岩石の。
ウラン精製時に出る放射能に汚染された排水は貯水池に流れ込みます。そもそもこれをどうやって処理するのか? 企業は絶対に漏れないし、安全だとしか言いません。

でも、この映画は原発や環境破壊に反対しつつも、必ずしも偏った見方をしているわけでもありません。

近年の原発推進論のおかげでウランは高騰し、鉱山会社は儲かっています。
ウラン鉱山のおかげでナミビアの経済発展し、そこに働く女性は将来の夢を語ります。
カナダの廃墟に残ったかつての住民は、自分の住む土地の土壌検査をして"放射能を発する土壌"であることを喜んでいます。再び、ここでウランを採掘できる可能性があるからです。
あるいは自分の住む町を放射能廃棄物の受け入れに使ってもらっても良いという住民もいます。
もし、ウラン鉱山がなくなってしまったら、彼等の生活はどうなってしまうのか……。

このへんのジレンマは今の日本にも通じるところがあるな、と思いました。

この映画では、ウラン鉱山から出る放射能汚染された産業廃棄物が、どれほどに危険なのかという話はしていません。
昨今流行りの言い方をすれば、ただちに影響があるわけではないようです(とはいえ遅発性の悪影響は間違いなくあるようです)。
ドイツ政府がウラン鉱山跡地を危険地域として立入禁止にした、という話は出ます。でも、ズリ山埋め戻しの作業員は防護服を着ている様子はなかったです。
鉱山で働いていた人々の健康調査の結果は酷いものだったようですが、どのように酷いものだったのか具体的な数字は出てきません。
ナミビアで現在働いている人々に、どのような健康被害が出ているのかの調査もありません。
オーストラリアでは原住民たちが自分の土地と環境を守るために、鉱山に反対しているのですが、それは鉱山開発による環境破壊が問題なのか? ウラン鉱山特有の環境破壊が問題なのか?
これらは数字に出せないものだったのか、それとも数字を出すまでもなく悪影響だという判断だったのか? それはわかりません。

たぶん、この映画を見ただけですぐに答えなんか出ないと思います。
でも、原発が必要だという人も不要だという人も、ウランを採掘すると放射能廃棄物が大量に出て、処理がままならないという現状は知るべきだと思いました。
そして、この映画が公開された2010年は「チョエルノブイリは特別なケースだった」という認識の人が多かったのです。でも、今はそういう状況ではないことを我々は知っています。

イエロー・ケーキ クリーンなエネルギーという嘘』(映画館)
監督:ヨアヒム・チルナー


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