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国立西洋美術館「シャセリオー展」記念講演会 『テオドール・シャセリオーと聖堂装飾』

桜が咲いても、冷たい雨が降ったりして、
中々満開まで行かないようですが(今日、満開になった模様)、
日曜日は上野に出没。
国立西洋美術館で行われる、
シャセリオー展の記念講演会に行ってきました。

最近、この手の講演会は、満席になる事が多く、
聴講券配布時間間近に行くと、手に入れられないことがありますが、
今日は、桜を見ながらの、余裕を持った現場到着です。

今日のテーマは「テオドール・シャセリオーと聖堂装飾」で、
講演者は、成城大学教授の喜多崎 親さん。


  • シャセリオーは、(1)若くして亡くなった、(2)壁画が多い、(3)知名度が低い、と言うことから、日本でシャセリオーの展覧会は難しいと思っていた。なので、今回の展覧会は、貴重。
  • シャセリオーは、アングル(新古典主義)とドラクロワ(ロマン主義)の折中者とも言われていて、どちらの特徴もみられる。
  • シャセリオーじゃ、生涯に4件の公共建築の壁画の注文を受けていて、うち3件が聖堂装飾。残り一つは、現在のオルセー美術館の場所にあった旧会計検査院の壁画で、現存していない。
  • 時代的には、フランス革命の頃の話。1789年共和国憲法で宗教が自由化され、カトリックが非国教化され、聖堂の破壊・略奪が行われた。その後、王政復古を経て、カトリックが再国教化されたり、7月王政での再度の非国教化されたり。そして、第二帝政期にかけて、大量の壁画が発注・制作されたりしていた。
  • 聖堂の建築や、内部装飾は、地方公共団体が実施。公共事業として、建前では注文は平等であるので、一つの聖堂に複数の芸術家が関わったりしている。例えば、ノートルダム・ド・ロレット聖堂。30数人の画家が携わっている。その結果、画家が異なるので、絵毎に書き方がバラバラになったりしている。
  • 描かれる宗教画については、盛期ルネサンスの様式は異教的であると考え、ラファエロ以前の様式を採用する者が居たり、逆に、リアリティの追求からこれに反対する者が居たりした。後者の立場では、例えば、オラース・ヴェルネが「古代アラブと現代アラブの衣装に見られる共通点」と言う趣旨の講演を行い、古代の衣装は今のアラブの衣装から想像できるとして聖書世界を描いたりしている
  • 19世紀の壁画は、状態の悪いものが多い。作画技法の問題
  • サン=メリ聖堂の壁画について「シャセリオー氏が、オーヴァーベックや、ミュンヘンとデュッセルドルフの古拙な芸術家達が流行らせたビザンティンあるいはゴシック風の気取りにひきづられることが無かったことも、賞賛すべき」と言う評論がある
  • ルーベンスなどに見られる《十字架降下》は、縦長。一方、シャセリオーによるサン=フィリップ=デュ=ルール聖堂アプシスの《十字架降下》は、立て方向がみじかい。むしろ、描かれている場所の問題から横長。左右対称性も見られる。
  • シャセリオーの《地面に座るアルジェリアのユダヤ人女性》は、親仏派カリフの招きでアルジェリア旅行に行ったときに描いている。ムスリムの女性は、男性の前に出る事が無いので、描かれているのは非ムスリムの女性。後に《後宮の浴室を出るムーア人女性》を書いているが、これは先の作品の経験を下にした想像
  • サン=ロック聖堂洗礼盤礼拝堂の壁画の作画条件としては、礼拝堂の目的に合った先例に関わる主題と言う条件があるが、既にルモワーヌ一族による彫刻《キリストの洗礼》があったので、それ以外の主題である必要があった。よって、《エチオピア女王の宦官に洗礼を授ける聖フィリポ》や《日本とインドの布教者聖フランシスコ・ザビエル》と言う作品になった。
  • 《日本とインドの布教者聖フランシスコ・ザビエル》では、描かれている台座の周囲にそのタイトルがかかれている。だが、日本を見た人に思い起こさせる(誤解させる)が、実際にはインド
  • シャセリオーは《エチオピア女王の宦官に洗礼を授ける聖フィリポ》を描く際、ベルタンの《エチオピア女王の宦官に洗礼を授ける聖フィリポ》を参照したと考えられる。また、描かれている馬の馬具は、《アッシリアのサルゴン2世宮殿の浮き彫り》の馬も参考にしたとも考える事が出来る。
  • サン=ロック聖堂洗礼盤礼拝堂の壁画二点では、シャセリオー本人は、神の下では人種や身分の差が無いと言う事を描こうとしていたのではないかと思われるが、批評家のサン=ヴィクトワールなどは、作品中の後宮の女性や有色人種の様子を、差別的に誤解していた。

いやぁ、なかなか勉強になりました。
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