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バラの名前(つづき)

2013-01-14 12:41:41 | 園芸

[この記事は、昨年の7月に書いたものに一部書き換え修正をし、今日の日付として投稿しなおしたものです]

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外国で作出され、日本に輸入されたバラの名前で問題となるのが綴りと発音の食い違いです。

例えばこの「コレット」。
私はここで コレットと書いていますが、購入先のさらにその仕入先の園芸店のつけているラベルには「コレッタ」と書いてあります。
しかし綴りは Colette ですから、「コレッタ」と読むのは無理があるように思われます。

また「アルベルティーヌ」についても、「アルバータイン」と記しているケースもありました。
Albertine を英語読みすればそのように読めるかもしれません。このバラはフランスのバルビエが作出したバラであることを考えると、フランス語の読み方で「アルベルティーヌ」と読むのが自然であると思うのですが。

NHKの『バラ大百科』 この本は、綴りに対する読み方に関しての几帳面さが伝わってきます。
フランス作出のバラはフランス語綴りの発音というように。
例えば Princesse de Monaco は「プランセス・ドゥ・モナコ」、さらにSouvenir du Docteur Jamain は「スヴニール・デュ・ドクトゥール・ジャマン」などは、duのu、Docteurのeu、Jamainのai、などの発音。Prince Camille de Rohan は「プランス・カミユ・ドゥ・ローアン」なども。

ただ、これらのカタカナ表記も完全にフランス語の音を再現しているかというと、厳密にはできていないということになると思います。例えばdeのe 、 Docteur のeu はどちらも「ゥ」と表記されていますが、厳密にはこの二つの発音は違います。de とdeux の違いでもあります。euの発音は、ゥだけでなくォの音も含むような音になりますから、カタカナ表記は難しく結局ゥと書かざるを得ないという事情があるわけですね。外国語の音のカタカナ表記の限界の一例と言えましょう。

もう一例、Coletteはといいますと、「コレットゥ」となっています。語尾のtte のe は「無音のe」ですから、tteも母音を含まない子音のttの音だけになります。ところが子音だけの音を日本語に表記できません。「トゥ」にしても「ト」にしても日本語では母音を含んでしまいます。ですからどちらも正確とは言えないのではないでしょうか。

こうしてみますと完全にフランス語の音を再現することはある程度あきらめるとしなければなりません。ではどのように考えればよいでしょう。
視点を変えてみましょう。『シェリ』や『青い麦』の作者であるSidonie-Gabrielle Colette は、岩波文庫で「コレット」となっていることをはじめとし、文学の世界では広く、Coletteは「コレット」と表記されているのではないでしょうか。日本語としてすでに「コレット」という読み方が通用していることを考えると、ここは日本語としての「コレット」のほうが自然な感じで受け止めることができるように思います。

Pierre de Ronsard はどうでしょう。de の e も同じように考えてみることができると思います。コレットと同様、詩人としての名前ピエール・ド・ロンサールという表記が広く使われていますから、「ピエール・ド・ロンサール」と表記が馴染みやすいと思います。

そこで先ほどのPrincesse de Monacoのde に戻ってみましょう。 Princesse はフランス語圏の王女という意味でプランセスという発音とその表記には納得できます。すると「プランセス・ド」としてしまうと、どこか違和感を感じてしまいます。プランセスときたらドゥと読みたくなりますから、やはりPrincesse de Monaco は「プランセス・ドゥ・モナコ」というのはとても良い感じがします。「プリンセス ド モナコ」という呼称が、コレットやピエール・ド・ロンサールほど広くいきわたっている名称ではないと考えられることも理由の一つになると思います。


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