気仙沼復興印刷隊

震災で失った街を再生するために、

復興に向けて印刷会社ができること

ニコニコニュース後編がダイジェスト公開

2012-09-21 04:34:08 | インポート
ニコニコニュース後編ダイジェストhttp://news.nicovideo.jp/watch/nw371912
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2011年4月末。阿部さんは気仙沼で被災した印刷会社4社(双葉印刷株式会社、有限会社愛隣オフセット印刷社、有限会社須田印刷、菅原印刷)に声をかけ、無料の地元情報紙『週刊気仙沼復興マガジン』を創刊することを決めた。この頃、ようやく新聞折込が再開された時期だった。

(中略)

「そんなにお金にならないことをしていて大丈夫なんですか」

 インタビューの途中、筆者はたまらず阿部さんに聞いた。
 
「お金の面で言えば、正直言って苦しいです」

 阿部さんは机の引き出しから書類の束を取り出すと、筆者に見せてくれた。それは県に対して出す補助金の申請書だった。

「いろんな補助金制度の申請を出したんです。だけどすべてはねられちゃったんですね。従業員を一人雇用すると220万円の補助金が出る制度の申請も出しましたが、それもだめ。申請を出すときに『他のなんらかの補助金制度を通っていますか?』と聞かれるんです。『ないです』と答えたら、『それじゃあダメですねえ』と通りませんでした」

 国が行なっている「中小企業等グループ施設等復旧事業」への申請も何度も行なった。この制度は被災した業者がグループを作って申請するもの。施設の復旧にかかる費用の4分の3を国の補助金でまかない、残りの4分の1を事業者が負担するというものだ。

「何回も書類を作りなおして申請したのですが、すごい競争率なんです。結果的に通ったのは、自動車関係、水産関係、お菓子屋さんのグループ、観光関係と4つの業種だけでした。それ以外の一般事業所や小売店は全部はねられちゃったんです。その書類の作り直し、申請のし直しで、まるまる一年かかってしまいました」

 パソコンも復旧のための設備としては認められなかったという。

「他に流用できるものはダメだと言われるんです。たとえばうちは倉庫にしている一階をまちづくりのコミュニティスペースにしたいので、家具を買いたいと言ったらダメだと却下になりました。『他に転売できるようなものは該当しない』と。県でも同じような補助事業があったので、印刷をするための機械の購入資金を申請したんです。ところが『購入しようとする機械は以前あった機械と同じものですか?』と聞かれたんです。でも、数年前に購入した機械と全く同じでなければならないなんて無理ですよ。もう売っていない機械もあるんですからね」

 さらに問題がある、と阿部さんは指摘する。

「設備を購入するための前金が出るわけではないんです。まずは自分が払って立て替えて、その領収書の金額に応じて補助を出す仕組みです。その上、見積書も請求書も、すべて最初に提出した見積書どおりのものでないと申請も通らないんですね」

 補助金を受けとるためには、被災者が自己資金を用意しなければならない。しかし、銀行から融資を受けようにも、津波によって流された設備のローンがまだ残っている。6年前に設備した1階工場の設備のローン残高は8千万円。震災後は「払える時でいいから」と返済猶予を認めていた銀行も、この9月からは「利息だけでも払ってほしい」と言うようになった。そんな状態では簡単に新規の融資をしてくれないのが現実だ。

「実際のところ、自己資金がいくら用意できるかを設定して、その資金×3で予算を出さなければならないんですね。申請書にしたって、データを事細かくエクセルのデータにして下さいと言われます。一緒に申請したグループのメンバーのなかには、わざわざパソコン教室でエクセルの講座に通ってまで申請書を作った人もいます。それでも申請が却下される。補助金制度は国が復興予算として捻出したものであることはわかるし、ありがたいです。けれども、被災地の事業者は『必要なもの、欲しいものが買えない』状態なんですよ」

そこそこ週刊・畠山理仁 「Vol.053 「復興? もういいでしょう?」は本当か?【後編】」より