Sea Lupinus

Let's start a scuba diving at just before sixty years old

ヤバすぎる!「培養肉ハンバーグ」の衝撃 肉の生産も消費も、根本から変わる

2014-12-27 06:30:00 | 日記

http://toyokeizai.net/articles/-/56802
田中 大貴:マーバルパートナーズ ヴァイスプレジデント

2014年12月27日 東洋経済
 

シャーレの中で製造された「培養肉」
 

 時代や環境の変化とともに、人々の趣向は変化し、業界におけるルールも徐々に変化していく。しかし、何かをきっかけにそのルールが一変し、昨日まで覇者だった企業が凋落し、名も無き企業が突然台頭してくることがある。この“業界変革”のインパクトは想像を絶するほど大きい。しかも思いも寄らない方向から急にやってきて、既存のビジネスモデルを一変させる。

 前回は料理を製造できる3Dプリンタの誕生が外食業界のビジネスモデルに与えるインパクトを考察した。今回のテーマは「培養肉」。人工的に作られた肉が、食品業界や外食業界にどんな変革をもたらすのかを予測する。

 

■牛の幹細胞を培養

 

試食会で振る舞われた人工肉ハンバーガー

 

 2013年8月、英国ロンドンで世界初の「人工肉バーガー」の試食会が開かれたのを知っているだろうか。素材は牛の幹細胞をシャーレで培養して人工的に製造されたものだ。試食会の参加者は「肉のジューシーさは無いが、食感は完璧だ」、「脂肪分がなく赤身の肉という感じだが、普通のハンバーガーを食べているようだ」と語った。

 

 この人工肉(培養肉)バーガーを作ったのは、オランダ・マーストリヒト大学教授のマーク・ポスト医学博士。ポスト氏は世界的な食肉生産の需要に応えるための技術として、「カルチャード・ビーフ(牛肉の培養)」を提案している。

 

 カルチャード・ビーフは理論上、数個の幹細胞から1万~5万トンの肉が得られるという。適切な栄養を与えることで、細胞が健康的な脂肪酸を作り出す能力を利用すれば、培養肉は家畜から得た肉よりヘルシーなものとなる。幹細胞から培養した牛肉はエネルギー効率が高く、環境、大地、水への負荷が少なく、動物の苦痛も少ない。そして、動物の殺生を嫌う一部のベジタリアンからも好反応のようだ。

 

 試食会で出されたハンバーガー1個の値段は、研究費込みで約3500万円。ただ、この1年で細胞を育てる培養法や培養液を改良しており、ポスト氏は「試算ではハンバーガー1個1400円で作れるまでになった。市場に出すには10年以上かかると思うが、さらに改良を重ね、従来のハンバーガー以下の値段を目指す」と述べている。

 

 こうした技術革新によって、今後どのようなことが起こるのだろうか。業界変革を予測するためには、ニュースを見て、聞いて、ただ驚き、感心するだけでは不十分である。見聞きした技術革新が世の中の「当たり前」になった時、誰が影響を受けて、世界がどう変わり得るのか、自分の頭で筋道を立てて予測する必要がある。

 

培養肉を開発したマーク・ポスト氏

 

 培養肉は一部のベジタリアンからも支持されている。家畜を殺す必要がないからだ。家畜から幹細胞を採取して、培養すれば、必要な食肉が出来てしまう。

 

 現段階で味はともかく、食感は肉そのものであり、この培養肉を生み出すコストが、一般的な食肉を製造するコストより下がれば、経済的にも、(家畜を殺さないという意味で)倫理的にも培養肉を当たり前に消費する時代が来るかもしれない。価格競争が激しい外食企業でも、培養肉を扱い、牧場産の自然肉を使わなくなる可能性がある。

 

 「そんなことは有り得ない」と思われた方は、成型肉を考えて欲しい。成型肉は細かいクズ肉やそのままでは販売できない内臓肉を軟化剤で柔らかくして食品添加物で固め、形状を整えた食肉である。激安の焼肉屋チェーンやステーキ屋チェーンでは当たり前のように使われているものだ。また、子どもに人気の高い「ミートボール」はどうだろうか。すべてとは言わないが、多くの商品が本来なら産業廃棄物となるべきクズ肉に、添加物20~30種類ほど大量に投入して固めて加工したものだ。これら成型肉やミートボールと比べれば、「培養肉」を一概に否定することは出来ないだろう。

 

■畜産「バイオ工場」が続々と誕生?

 

 それでは、培養肉が与える影響について考えてみたい。

 

 培養肉の技術は、まず畜産業界に大きな変化を与える可能性がある。畜産業の「家畜を育てて出荷する」というビジネスモデルを根底から揺るがしかねないからだ。一方で、培養肉を毛嫌いする人々や本物の肉を好む人も当然にして残る。既存の畜産業の縮小は避けられないが、培養肉と差別化できるほどの品質を保てるプレーヤーは生き残ることができるだろう。

 

 また畜産農家を代替するプレーヤーとして、実験室のような畜産「バイオ工場」が出てくる可能性もある。そこで働いているのは技術者であり、現在の畜産農家とは性質が異なる。日本においては、外食産業・食品業界と畜産業界の間には、独特の商慣習があり、その長期的な付き合いや信頼関係が強みにもなっている。

 

 が、培養肉の使用が当たり前になると、そのルールが崩れる。外食産業や食品業界の成功要因はそういった「繋がり」ではなく、「いかに優秀な技術者を集められるか」になるかもしれない。もはやオールドタイプの業界ではなく、バイオテクノロジーを駆使するニュータイプの業界に変貌を遂げる。

 

 このような技術革新から描ける将来を考えると、外食産業・食品業界のプレーヤーの行動もおのずと変わってくる。

研究室で牛の幹細胞を培養

 

 たとえば、外食企業や食品企業はバイオテクノロジーが競争力の源泉となる日を見越して、優秀な技術者を受け入れる土壌を作っておく必要がある。製薬会社やIT企業との協業、あるいは培養肉のような先端技術を持つベンチャー企業への投資も考えてもおかしくない。そういった企業には、優秀な技術者や研究者など人材がそろっているからだ。

 

 逆に、製薬会社やIT企業などが培養肉市場に続々と参入してくるケースも考えられる。そうなると市場が拡大する一方で、激しい競争が繰り広げられるようになるかもしれない。

 

 いずれにせよ、培養肉の普及が始まれば、既存の外食産業・食品業界のプレーヤーは内部資源だけでは、業界変革という大きな変化に対応できなくなる可能性が高い。

 

■新しいビジネスが生まれる可能性も

 

 現在、フランスでは国内の飲食店向けに「fait maison(自家製)」の認証制度が設けられている。レストランで提供される料理が「自家製」か、それとも冷凍食品などの「出来合い」の料理なのかを厳重に区別するためだ。同様に、将来的には「培養肉」か「自然肉」を区別する認証制度、さらには認証力を証明するような民間資格も生まれるかもしれない。

 

 ハラール認証のように、玉石混淆の認証団体も出てくるだろうし、有料セミナーを受講することで資格を付与する資格ビジネスなども生まれる可能性がある。技術革新は、業界変革を起こすだけではなく、新たなビジネスをも生み出す可能性があるのだ。

 

 「培養肉」という技術革新1つとっても、それが及ぼす影響や与える変化を考えることで未来を予測できる。「風が吹けば桶屋が儲かる」ということわざがあるが、ある事象が発生すれば、必ず何かが起こる。それが一見すると全く関係のない場所や物事に、大きな影響をおよぼすことも十分にありうるのだ。


東日本でよく獲れるキアンコウ 冬場の鍋の人気者

2014-12-27 06:30:00 | 日記

http://www.nikkei.com/article/DGXMZO81195170S4A221C1000000/

2014年12月27日 6:30 日本経済新聞

キアンコウは全長1メートルほどになる(大洗水族館提供)

 

 寒い冬の夜には鍋料理がありがたい。その中でも鮟鱇(あんこう)鍋の人気が高い。鮟鱇鍋の材料には、アンコウとキアンコウの2種の魚が使われるが、両種は似ていて、魚市場では区別せずに扱われていることもある。アンコウは全長40センチ程度の小型種で、口の中には白い斑紋がある。これに対し、キアンコウは1メートルほどになり、口の中の斑紋がない。

 

■海底に潜み 大きな口で獲物をパクリ
 
 両種はともに北海道から東シナ海までの水深30~500メートルに分布するとされているが情報が混乱しているかもしれない。最近の研究では、両種は水温に対する適応性が異なり、アンコウが14~23度の海域に多いのに対して、キアンコウは6~16度の海域に主に生息するという。また、キアンコウに水温と水深が記録できる小型標識をつけて調査した青森県での結果では、水深60~160メートル、水温6~14度の海域にいることが多かったという。

 東日本で獲れるのはほとんどがキアンコウで、水族館でも飼育されている。

 キアンコウの頭の上には背ビレが変化した釣りざおのような長いとげ(誘引突起)があり、その先に白い皮膚の小片(擬餌状体)がついている。小魚を見つけること、この誘引突起を釣りざおのように前後に振って、白い皮片をを見せびらかすようにしておびき寄せる。小魚が口先まで近づくと大きな口をがばっと開けて、一瞬のうちに捕らえる。下あごには細かな犬歯状の歯が並んでいて、くわえた餌を逃さない。

腹部が大きく膨れた産卵前のキアンコウ(大洗水族館提供)腹部が大きく膨れた産卵前のキアンコウ(大洗水族館提供)

 

 普段は餌が近付くのを待って、砂地の海底に体を半ば埋めてほとんど動かず、2、3分に1回しか呼吸しない。砂に埋もれて生活する習性にあわせて、ふつうの魚のようにエラぶたがなく、スリットのような鰓孔(さいこう)もない。呼吸の時には体全体を持ち上げるようにして口から海水を吸い込み、胸ビレの付け根にある筒状のエラあなから海水を吐き出して、もとの姿勢に戻る。呼吸の動作は魚というよりもタコに似ている。

白いベールのようなキアンコウの卵帯(大洗水族館提供)白いベールのようなキアンコウの卵帯(大洗水族館提供)

 

 キアンコウの東日本での産卵期は4~6月で、オスは全長40センチで成熟して繁殖に加わる。産卵行動を見た話はあまり聞かないが、茨城県の大洗水族館では、メスが卵を放出するのが何回か観察されている。

 

■ゼラチン質の卵帯 長さ10メートルにも

 産卵期のメスのキアンコウの腹がだんだん膨らんで体がボールのようになる。こうなると体を砂に埋めることができなくなって安定性を失い、体の向きを頻繁に変え、呼吸も速くなる。いよいよ産卵が近づくと、尾ひれを大きく動かして立ち泳ぎするようになり、ときどき身をよじるような行動をする。産卵時には、激しく尾ひれを振って勢いよく水面に向かって上昇し、水面付近で全身を左右に大きく振って卵を放出する。

 キアンコウの卵は長い帯状の透明なゼラチン質の卵帯に包まれている。大洗水族館での5回の記録では、卵帯は長さ8~10メートル、幅50~90センチ、重量10~20キロ。この中に直径1.8ミリの卵が120万~170万個包まれていた。

 もちろん、こんな大きな卵帯が全長80センチ、体重10キロ前後の親魚の体内にあるはずがなく、対外に放出された途端に海水を吸って、大きな重量も増したのだろう。ただ、大洗水族館には、このとき水槽内に雄がいなかったので、せっかくの産卵もすべて未受精卵だった。

 キアンコウが産卵する海域では、流れ藻に絡まっている卵帯や、海面近くを漂っている卵帯が見つかっている。卵帯に包まれた受精卵から仔魚(しぎょ)がふ化するまで1週間ほどかかる。水族館ではキアンコウの仔魚をまだ育てられないでいるが、3センチほどに育った稚魚がダイバーに発見されている。カサゴに似た体に扇子のような半透明の胸ビレを大きく広げて海中に浮かぶキアンコウの稚魚を水族館で飼って見せることができれば、きっと人気が出るだろう。

 鮟鱇鍋いつも父母居て笑いあり 正比古

(葛西臨海水族園前園長 西 源二郎)
西 源二郎(にし・げんじろう) 1943年生まれ。専門は水族館学、魚類行動生態学。70年、東海大学の海洋科学博物館水族課学芸員となり、2004~09年に同博物館館長。同大学教授として全国の水族館で活躍する人材を育成した。11年4月から14年3月、葛西臨海水族園園長。著書に「水族館の仕事」など。

2014年12月27日 6:30 日本経済新聞