映画館で観れなかった作品をDVDで観るシリーズ。今回はアカデミー賞主演女優賞ノミネート作品で実話に基づく映画「ラビング 愛という名前のふたり」です。
自由と平等の国、アメリカ。しかし、その歴史は差別との闘いで、その闘いは今なお続いてます。今回の作品は、僅か50年前にバージニア州で起こったラヴィング夫妻の愛の闘いを描いた実話に基づく映画です。
ヴァージニア洲で白人男性のレンガ職人リチャードと黒人女性ミルドレッドの間に子供が宿ります。リチャードはすぐに結婚を決意し新居を構えます。ある日突然、州警官が乱入、二人は逮捕されます。罪状は異人種間の婚姻を禁止した法律に違反したこと。
禁固刑は免れたものの、25年の執行猶予と故郷で暮らすことを禁じられ追放されます。時を同じくして黒人差別による人権運動が高まる中で、ミルドレッドは司法長官に、手紙で不当な差別を訴えます。司法長官は人権委員会に二人を状況を委ね、連邦裁判所に直訴し、10年を歳月をかけて裁判を勝ち取ります。
コリンファースのプロデュースの元で完成した本作。主演のミルドレッド役はオーディションで選ばれ、二年をかけて完成させた意欲作で、ミルドレッド役のルース・ネッガはアカデミ―賞にノミネートされ、オスカーは逃したものの、夫と共に生きる強い信念を静かに感じる素敵な演技でした。また、夫のジョエル・エドガートンは、初監督のギフトでは、犯罪者役を自ら演じる実力派の俳優で、演技に徹する姿勢に定評があります。今回もレンガ職人としての技術を身に着け、実在の人物にイメージを再再現するために歯並びを悪くするなど、この作品に対する意気込みが感じました。
今回の作品は、人種差別から起こる法廷闘争を中心に置かず、夫婦の絆に力点を置き地味な内容ですが、地域に名指す偏見を静かに語ることで、かえって内面の怖さを感じます。そして何より、市井の人の愛の姿がにじみ出ることで人種を超えた夫婦愛と家族愛に深く感銘しました。
リチャードは、裁判を勝ち取った後に、不慮の事故で亡くなりますが、妻ミルドレッドは、生涯独身を貫きます。そこにも、歴史的な判決の陰で一人の人間として愛する人を思い続けるミルドレッドの深い愛を感じます。