先日リニューアルオープンした名古屋の老舗映画館、伏見ミリオン座で2本連続観賞しました。今回はアルフォンソ・キュアロン監督の「ROMA/ローマ」を。
ゼロ・グラビティで知られるキュアロン監督。近年注目されるメキシコ系監督の一人ですが、今回の作品は、ベネチア映画祭で最高賞である金獅子賞を、アカデミー賞ではオスカー3冠に輝く話題作でした。当初は有料動画配信サイトでの提供で、劇場公開までかなりの時間がかかりました。
内容は、1970年代のメキシコ・ローマ地区の家族とメイドの主人公を中心に、その日常に起こる諍いと混乱のメキシコ社会を重ねながら描かれています。そして、表紙の浜辺で身を寄せる家族の姿が印象的なモノクロームの世界で物語は進みます。
物語の前半は、医師の夫アントニオと妻のソフィアのすれ違い生活とメイドのクレオと同僚の恋人の従兄弟フェルミンの恋愛が描かれ、後半では、アントニオの長期出張とソフィアの妊娠をきっかけに、家族の崩壊へと進みます。しかし、ソフィアとクレオの不幸により家族の絆が深まっていきます。
今回の作品の重要なところは、やはりモノクロームで描かれたメキシコの文化や社会。どこか、熱量を感じるメキシコの風土もモノクロームの情景の中では、自然に受け入れられ、むしろ美しさえ感じます。モノクロームを効果的に用いた作品は、数多くありますが、この作品でのモノクロームの世界は、濃淡が鮮明ですべてのシーンが強く印象付けられ、淡々と描かれた時間の経過に退屈さを持ちませんでした。
今回の作品、ベネチアで受賞後に、監督賞、外国語作品賞、撮影賞の3冠に輝いたことも十二分に頷けます。混乱の世界情勢の中で、異なる文化の許容と共存の大切さを沈黙の中で主張しているようで清々しさを僕に与えてくれました。