
今回は、2月に鑑賞した展覧会3件のレビューをお届けします。
先ずは岐阜県美術展で3月6日まで開催中の「円空大賞展」を。円空大賞展は、岐阜県ゆかりの円空の独創性と慈愛に注目し、幅広い芸術分野の著名人などの推薦を経て選出される展覧会で、今回が12回目となり円空大賞1名、円空賞4名が選出されました。
今回の展覧会は布と映像を用いた女性作家、マレーシアのイー・イランが大賞を受賞。土着性の高い色彩豊かな作品が印象的でした。円空賞の坂茂は段ボールなどの再生品を住宅にした建築のパネル写真でで紹介され紙の可能性を感じる展示でした。鴨池朋子は、刺繍された布による郷愁漂う作品が、どこか懐かしくまた造形物が自然と同化するように思えます。陶芸作品が並べられた吉田善彦は並べれた陶器に土の香りを感じ、こうした展示から陶芸の新たな可能性を感じます。これらの作品は撮影可能でしたが、唯一撮影不可となっていたのは池内晶子作品、会場に張り詰められた赤い絹糸は円空仏から着想されたもので、作家の意図が当世のSNS発信から歪められることを恐れてのことだとか。このことについては賛否がありますが、個人的には意図を理解し写真と共に発信許可を出した方が良かったのではと思います。
次は岐阜県現代陶芸美術館で3月16日まで開催中の「加藤孝造・追悼展」は2023年に亡くなられた人間国宝で志野や黄瀬戸でなどの作品で知られています。
今回は陶芸の世界に入る以前に18歳で日展入選の快挙を成し遂げた油彩画の作品などが紹介され、加藤幸兵衛の助言で陶芸の道に転向した氏が、師である荒川豊蔵の出会いにより瀬戸黒や志野、黄瀬戸を追求した作品がずらりを並ぶ追悼展にふさわしい展示と代表作はもとより画家としての片鱗を感じさせる作品など多彩な一面を感じさせる展覧会でした。
最後は、一宮市三岸節子記念美術館で3月16日まで開催中の「中谷ミユキ展」は、三岸節子と共に、戦中の女流美術家奉公隊や戦後の女流画家協会の創設など戦後の洋画界で活躍した女性画家の展覧会で、三岸の鮮やかな色彩と力強い表現とは異なり、マチエールに共通項がみられるものの繊細で抽象的な表現と淡い色調に違いを感じ、普段から常設展示で三岸節子作品を鑑賞している方には、同時代を生きた中谷ミユキに新鮮な気持ちを持つと思います。
まだまだ寒さが強いですが、徐々に穏やかな時期が近付いてくる3月。お近くの方はぜひ鑑賞してみてください。