女子フィギュア史上最もスキャンダラスな事件を題材にた映画「アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル」を観賞
今や日本のお家芸的存在となったフィギュアスケート。しかしながら、1990年代は、ロシア、アメリカが中心でした。当時のフィギュア界は、華麗な演技が重視される時代で、ジャンプも3回転が最高難度。そんな中で、今までの常識を覆した選手が、今回の主役、トーニャ・ハーディング。
ロックナンバーに乗って滑るリズミカルな演技と3回転に今なお数人しか飛べないトリプルアクセルを伊藤みどりに次いで成功させた選手です。ところが、彼女の運命はある事件をきっかけに転落の道をたどります。その事件が、当時の彼女のライバルであったナンシー・ケリガン襲撃事件です。
今回の作品は、母親をはじめ彼女を取り巻く人間たち、そして、ハーディング自身の証言をインタビューを交えながらドキュメンタリースタイルを取り、当時のヒットナンバーとコミカルな空気を詰め込んで軽快に進んでいきます。しかしながら、彼女のスキャンダラスな人生をある意味で真面目にクローズアップした内容ともいえます。
ハーディング演じるマーゴット・ロビーと母親を演じたアリソン・ジャネイがアカデミー賞の主演、助演でノミネートされましたが、二人の演技と容姿がうり二つ。親子の絆は、スポ根親子とは異なる、上流階層への怒りと欲望をストレートにさらけ出し、異常で異様な光景が展開されますが、そのエネルギーには、ただただ感嘆するばかりです。
トランプ大統領の誕生に呼応するかのように、アメリカの恥部を露出させる映画が次々と生まれていますが、ハーディング親子の存在は、フィギュアスケートを通して生まれたアメリカの恥部の犠牲者に違いありません。
しかし、実際の二人や演じた二人の姿は、夢破れ転げ落ちようとも、這い上がっていく生きるパワーを感じます。