おそらく、世界の美術ファンにとって名画との出会いは、一期一会であり、誰人も名画をすべてわが目に留める事は困難です。
ですから、好きな名画を自分の手元におきたいと言う思いから、複製画を購入する方も多いはずです。
しかし、その複製画は、名画を想像する道具としての価値しかありません。しかしながら、その想像を創造へと駆り立てるものに出会えたなら、それは、本物にめぐり合える扉の存在になるかも知れません。
その意味で、BS朝日で放映された「フェルメール光の王国」はとても魅力的な内容でした。
現在フェルメール銀座で開催中の「フェルメール光の王国」展での34点のリ・クリエイト(再創造)のフェルメール作品に携わる人々を描いたドキュメンタリー番組です。
リ・クリエイトとは、分子生物学者の福岡伸一氏が4年にわたりフェルメール作品34点を観賞した結果たどりついたフェルメール作品を当時の状態に再現しようとする試みです。
その試みは、フェルメール・センター・デルフトの協力のもと、350年も前の色彩を、最新のデジタル技術により再現することです。
その再現方法は、従来のポスターやキャンバス複製画と異なり、作品を細部にわたりチェックしながら、再現していく気の遠くなるような作業を繰り返しています。
そのことにより、現在のフェルメール作品から見ることができない色彩や描写が浮かび上がってきます。
さらに、作品のベースとなるキャンバスや額縁も当時作られたキャンバスや実際の額装に近いものを再現しています。
そいて、現在開催中のフェルメール光の王国展では、音楽家・久石譲氏によるオリジナル楽曲に、観賞ガイドには小林薫氏や宮沢りえさんの声に、そして、光の画家であるフェルメール作品にあたる照明にもその道のプロが参加するなど、作品を超えた世界をも、リ・クリエイトされた企画です。
7月22日までの企画展ですが、ぜひ巡回展として公開して欲しいものです。