
本日の美術展レビューは、ヤマザキマザック美術館で開催中の日本グラフィック界の先駆者「レトロ・モダン・おしゃれ杉浦非水の世界」展です。
杉浦非水は近代洋画の巨匠、黒田清輝がパリ万博で持ち帰った絵ハガキや資料によりアール・ヌーヴォーのデザインを知り、大正時代にヨーロッパ留学によりアール・デコのデザインに触れた日本のグラフィックデザインの先駆者ですが、一般的にはその画業は知られていないと思います。実は彼は、三越に入社後にポスターや広報誌を手掛け戦前から戦中、戦後の日本の商業デザインに深く携わっています。
今回の展覧会は、三越の前進である三越呉服店や銀座三越のポスターをはじめ、日本交通公社の機関誌やたばこパッケージや画家非水の画業を示す木版画集「非水百貨譜」など非水のデザインの軌跡をたどる展覧会となっています。
タイトル通り非水の世界は、レトロモダンなデザインで時代に違うアールヌーヴォーとアールデコの曲線と直線を巧みな融合させたオリジナリティあふれる作品に今の時代にも通用するセンスの良さを感じます。懐古主義的な風潮やダイレクトに主張する今のデザインの風潮に一石を投じているかのような斬新なデザインにときめくこと間違いないと思います。
また、ヤマザキマザック美術館のアールヌーヴォー期の所蔵品の中に実にマッチしていて優れたデザインの持つ時代を超えた永続性を強く感じました。
会期は2月25日(日)まで。無料の音声ガイドを聴きながら、ぜひ非水の世界を堪能してみてください。