ドイツで150万人を動員した捧腹絶倒の会話劇「お名前はアドルフ?」を鑑賞
今回の作品は、名づけをテーマにした舞台が2010年にフランスで大ヒット。その後にヨーロッパ各地で大成功をおさめ映画化もされてヨーロッパで大ヒット。そして、テーマの本家とも言うべきドイツで映画されたのが本作です。
舞台は、大学教授の夫と教師の姉夫婦の家。実業家の弟の妻のご懐妊祝いを兼ねて、幼なじみの音楽家を招いて楽しいディナーが行われようとする食卓。弟のトーマスが子供の名前を「アドルフ」と名付けると言い出したことから、事態は急変。名前を巡って大激論に発展するというものです。
全編会話だけで繰り広げられる舞台らしい内容、そこに、戦後ドイツではタブー視されてきた「アドルフ」の名前。歴史を知る方ならご存知かと思いますがヒットラーのファーストネームです。姉の立場で頑なに反対する姉、皮肉交じりの大学教授の夫は、感情を露わに大激論。なぜか弟は、アドルフの正当性を理路整然と語りだす。そして親友の音楽家は、家族の激論におどおどしながら仲介役に奮闘、ここまでは、どこか不穏な空気が流れ続け爆発しそうな展開に思えますが、この映画の肝は、その後に待ち受けていました。
家族や身近な人々を交えて論争は、時に結論を迎えることなく無意味な対話になりがちです。僕もそんなシュチュエーション出くわすことは度々あります。今回の作品は、そんな出来事をさらに掘り下げて、それぞれの持つ性格や立場を会話の中でうまく表現していて、飽きさせない会話劇として完結しています。
とにかく、面白くて登場人物に人間ウォチングしてしまいます。アドルフと聞くと生々しい展開を予想してしまいそうですが、ご心配なくラストは家族に新しい光が差し込んでいくヒューマンコメディーです。