映画館で観れなかった作品をDVDで観るシリーズ。今回は、Netflix動画から椎名桔平主演、園子温監督「愛なき森で叫べ」です。
今回の作品は、短編ドラマ形式で進む映画で、猟奇殺人事件に着想を得たファンタジーともいえる作品で、園子温監督をメジャー監督にのし上げた「冷たい熱帯魚」にエンターテーメント性を加えた感じがありました。
愛知県から上京してきた満島新之助演じるシンが、若者たちの自主映画に参加することなるのですが、その若者たちの知人の妙子と美津子に出演依頼します。妙子と美津子は女子高時代の友人で、友人の死を境に妙子はヤリマンに、美津子は引き込もりになっているのですが、椎名桔平演じる村田丈の登場で、映画仲間や家族を巻き込んで、狂乱の世界へと突き進んでいきます。
ベースになったのは、2002年の北九州監禁殺人事件。被告の松永太が、交際相手の女の家族や知人をマインドコントロール下において監禁殺害した事件。松永は、交際相手の女である緒方純子被告に殺害を実行させ、自らは手を下さないことでワイドショーでも毎日のように報道された事件です。今回も村田丈は、決して手を下さず被害者同士が殺害を繰り返すところは事件と酷似してましたが、監禁までにいたる過程は映画製作を通じて、村田が主導権を握っていきます。そんな彼に心酔していくのがシンで、どこか監督自身の生い立ちと重なるような感じがします。
モデルの松永役は、椎名桔平が演じた村田であることはわかりますが、殺害された被害者との関係に類似したところはありますが、内容としてはファンタジーな展開です。ラストでは、予想を裏切る予想外の結果でした。
映画.comのレビューを観ると園子音の最近の動向に批判的な人からの辛辣な評価がありましたが、彼自身が、過去のイメージで語られることを好まず、現在の映画づくりに変化していったことを考えれば個人的には納得できます。また、この作品は、スターリンのボーカルで2019年に亡くなった遠藤ミチロウに捧げられパンクの演出があり、そこが現在のエンターテーメント性と重なっているなと思います。
ともあれ、園子温監督自身は世間の批判など気にしない好き勝手ぶりが彼の魅力でもあります。