2018年ベルリン国際映画祭コンペティション部門出品作のミステリー「未来を乗り換えた男」を観賞
物語は、祖国ドイツからパリに逃れた青年ゲオルクが、ドイツ軍に占拠されたパリから南部のマルセイユにたどり着き、そこで手に入れた自殺した男のパスポートで逃亡を図ろうとしますが、そこに男の妻が捜していることを知ります。偽のパスポートと男の妻に正体がばれないよう苦心する道程が描かれたミステリーです。
最初は、僕の欠かせないテーマのナチスのユダヤ人迫害をベースにその時代が描かれていると思っていましたが、鑑賞が進むと風景や兵士の姿などから舞台が近未来的なSFミステリーになっていることに気が付きました。
ゲオルクの出会うアフリカ系難民の少年も加わり、手に入れたパスポートの男の妻が捜している理由が徐々に明らかになると事態は一変、ゲオルクは、ラストに思いもしない決断を下します。さらに、その決断が想像を超える結末へと発展していきます。
監督は「東ベルリンから来た女」で知られるドイツの名匠クリスティアン・ペッツォルトですが、2015年のあの日のように抱きしめても、ナチスの強制収容所をテーマにしたサスペンス作品であったことを思い出して、同様のテーマでありながら異なるシチュエーションで展開する監督の手法に改めて感心しました。
ファシズムと難民問題というドイツが世界が抱えるテーマをベースに極上のミステリーをあなたも味わってみてください。