池松壮亮&蒼井優出演の塚本晋也監督初の時代劇作品「斬、」を観賞
ヴェネティア国際映画祭、コンペティション部門出品作で、塚本晋也監督が初の時代劇に挑んだ作品ということで興味深く観賞しました。2015年には野火で2位に、今回の2018年でも7位にランクインしてます。
舞台は江戸時代末期の農村。池松演じる才気あふれる若き浪人都築は、村の若者に武道を教えながら農作業に勤しんでいます。そこに塚本演じる澤村という浪人が現れ、京都の動乱を収めるべく都築と村の若者を幕府側で戦わないかと誘います。武道に優れながら、その誘いにためらいを持つ都筑。出立の日、熱病で倒れた都筑に、思いもしない惨劇が待ち受けます。
都築に惹かれる村娘を蒼井優が演じ、都築と澤村に関わることで重要な役どころとして登場。主役の池松や塚本を超える存在感を放っています。また、都築を演じた池松も、現代劇とは異なる重厚感があり、また、その柔らかい表情から剣の持つ冷たさを持ちました。また、野盗の棟梁役として野火でも塚本作品に出演した中村達也も悪役としての強烈な個性を放っていました。
90分少々と作品としては短い上映時間ですが、幕末の混乱期に、なぜ刀を通じて、なぜ人を斬らなけらばならいか、生と死が向かい合わせてなる若き武士の姿を通して、人生の苦悩が集約された息を呑む力感あふれる作品でした。