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生誕130年記念 北川民次展にみる大衆芸術


現在名古屋市美術館で「生誕130年記念 北川民次展」が開催されている。北川民次の存在を知ったのは名古屋にある老舗の蕎麦屋に掛けられた干支寅の色紙絵だった。太い線描で描かれた干支は、色紙絵ながら強い印象を付けた。

北川は静岡生まれではあるが、戦後は瀬戸を拠点に制作を続け、愛知にゆかりの深い画家となった。今回の名古屋市美術館にはモディリアーニのおさげ髪の少女を中心にしたエコール・ド・パリの画家作品のスペースと共にオロスコ、リベラなどのメキシコ壁画運動の画家やフリーダ・カーロ、タマヨなどのメキシコ絵画の巨匠の作品を収蔵している。北川は当時の画家たちが渡仏するのに対し、渡米、そして15年にわたりメキシコで画家、美術教育者として活動している。彼にとってはメキシコは芸術と教育のルーツであろう。

愛知県には、今もモザイク壁画の作品が点在するが、メキシコ壁画運動との関係を考えると北川芸術を知る上での重要なアイコンであろう。瀬戸には絵画、版画などの膨大な作品が存在するが、製陶業で栄えた瀬戸とメキシコの労働者に重ねていたのではないか。この地がもたらした芸術への強い欲求が制作に駆り立てたのではないか。

今回の展覧会は約30年ぶりの回顧展で絵画作品70点を含む約180点作品と資料により構成されているが、どの作品も画面からにじみ出てくるような迫力を感じる。そしてデフォルメされた太い線描の人物像は表情豊かで強い意志を持っている。どの作品の権力への抵抗心を感じさせる。

一方で彼の作品は民衆への深い慈愛があり、決して破壊的なものではない。むしろ美術教育者としての愛をもった画家だと思う。そして大衆の中で生きた唯一無二の芸術家であろう。

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