三重県立美術館で開催中の関根正二展を鑑賞しました。
関根正二は、日本の近代洋画界において20歳の若さでこの世を去った夭逝の画家です。今回の展覧会は、生誕120年、没後を100年を記念して、僅か5年の画業の中で洋画界を駆け抜けた稀有の洋画家の全貌を知るうえで有意義な展覧会となっています。
関根正二は1899年・明治32年に福島県白河市に生を受けます。幼少期に東京・深川に移り住み当初は日本画を学んでいました。当時親交のあった画家にあの美人画の巨匠として名高い伊東深水がいました。その後に16歳で洋画家としてデビュー。1918年の二科展で新人賞にあたる樗牛賞を受賞、「信仰の悲しみ」「姉妹」「自画像」の三作品で受賞し話題となり、彼の作品の特色的な色彩から、関根のヴァーミリオンと称賛されました。
今回の作品中で油彩画は僅か10点余り、水彩画、素描を含め40点ほどで作品ですが、関根の作品の全貌を知るうえで十分な展示です。なかでも、大原美術館所蔵の国の重要文化財となっている信仰の悲しみをなど三作品が展示され、代表作の三星(上の写真)など若さがほとばしるような荒々しいタッチの中に静謐さと深淵的な精神性を感じ心を揺さぶられる感動を持ちました。
関根正二は、同時期を生き親交のあった22歳の若さでこの世を去った村山槐多とよく比較されますが、大胆な作風とタッチを持つ村山の作品を動とするならば、関根の作品は静の表現と言えます。しかしながら、日本の近代洋画史の中で同時期を生き、夭逝した二人の持つ世界は、神秘性に満ち満ち、精神性を充満したものだと思います。
二人の若き巨星は、時代と共にその評価が増し、近い将来、世界的にも高い評価を得ると確信します。いつの日か、二人の作品が合いまみえる展覧会が開催されるのを期待しています。
信仰の悲しみ
姉妹
自画像