深田康司監督、筒井真理子主演のヒューマンサスペンス作品「よこがお」を鑑賞。
浅野忠信と筒井真理子が共演しカンヌのある視点部門で審査員賞を受賞した「淵に立つ」で注目を浴びた深田康司監督、淵に立つでは、過去と現在の二つの物語を組み合わせて、夫の共犯者である浅野演じる男の静かな復讐劇と二人の情事による家族の転落劇が展開され、心理的な描写で絶望をここまで描けるのかと感嘆しました。
物語は、筒井演じる介護看護士の市子の現在と過去が同時進行で展開されます。市子は、大石家に祖母の訪問介護につき、介護の合間にニートの長女、市川演じる基子に介護福祉士の勉強を教えています。基子は、市子を慕い特別なな感情を抱いているのですが、ある日、基子の妹サキが誘拐失踪事件が発生。サキは無事保護されるが、誘拐犯に以外の人物が浮かびあがり、市子の日常が一変します。そこには、基子が強くかかわっています。
今回の作品は、外見上は、まじめで明るい市子を筒井真理子が移ろう色香を漂わせながら演じています。そして市子を慕う基子の市川実日子は、市子への抑えきれない感情を表に出さず、巧みに破滅へと追いやっていきます。この二人の演技がとても魅力的でした。
作品の背景は、一見すると犯罪被害者と加害者の家族の問題を描いた作品のように思われますが、深田監督にとっては、その問題はテーマではないことが過去の市子と名前を変えて現れた現在のリサの二つの側面により、徐々に本当のテーマが浮かびあがってきます。市子と基子の感情の変化がとても巧みです。二人の存在を悪女に例えれると筒井は悪女になりきれない女。基子は悪女とは思っていない女でしょうか。動物園での二人の会話の中にそんな感じを抱きました。向かい合う二人から決して視線を外さないでください。