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フェルメール 窓辺で手紙を読む女の私的考察

先日の大阪市立美術館で開催中のドレスデン国立古典絵画館所蔵のヨハネス・フェルメール作「窓辺で手紙を読む女」の作品解説や修復作業などを知って僕なりの考察をしてみました。


皆さん御存知の通り、この作品はX線検査によって1979年に壁に塗られた奥にキューピットの画中画が発見され2017年から塗られた壁の絵具を取り除く作業が行われ2019年当初の姿が蘇りました。そしてドレスデン国立古典絵画館に次いで世界で初めて日本でお披露目となりました。このことは、世界の中でもっともフェルメールファンが多いからではと勝手に推測してます。

僕もフェルメールファンの一人ですが、この絵画の不思議な巡り合いを知るにつけて、ますますこの作品が魅力的になりその経緯から想像力を掻き立てられました。

先ずは修復前の作品の塗られた壁についてですが、この作品の来歴から明らかになっています。この作品はザクセン選帝侯のコレクションであり当館に収蔵されることになるのですが、数多いコレクションの中の一枚に過ぎず、後に鑑定家によりレンブラント作とされました。後にピーテル・デ・ホーホ作となり、1860年に初期のフェルメール作として真贋されます。塗られた経緯は定かではないですが、おそらくレンブラントの作品としてはキューピットの存在に違和感があり、よりレンブラント作に近づけるために塗りふさいだのではないかと思います。

この作品のフェルメールの特徴として挙げられるのは、フェルメールがしばし用いるレンズの凹面のような光の表現と初期に観られる点描技法ですが、もうひとつ前面の右にある緑色のカーテンです。このカーテンはルプソワールと言われる絵画技法で作品に奥行きを与えるものですが、現実にはありえない存在です。このカーテンが僕の想像を掻き立てました。

これは僕の想像ですが、ベッドの上に散在する果実、キューピットにより踏みつけられた仮面と握り潰された蛇、そしてもの悲しげに見える女性が読む手紙、これらから想像できるのは道ならぬ恋に落ちた女性の情事の後に、置いていった別れの手紙のように思えます。そして、その物語は緑のカーテンにより静かに幕を閉じていくように感じます。

フェルメール作品にはそれぞれに想像を掻き立てる物語が潜んでいるのが魅力ですが、かつてない想像力は掻き立てられたのは、現在に技術により明かされた真実の姿に他なりません。むろん塗られたかつての作品にも魅力がありましたが、さらに奇跡ともいえる一枚によってフェルメールの魅力が深まりました。


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