映画館で観れなかった作品をDVDで観るシリーズ。今回は、カナダで最も有名な画家の半生を描いた作品「しあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイス」です。
アートに携わる仕事をしていると、画家の半生を描いた映画やアートのドキュメンタリー映画に目が向きます。今回は、僕も記憶になかった、カナダの女流画家のモード・ルイスの半生を描いた作品を紹介します。
日本では、あまり馴染みがないカナダの画家。そんな中で、フォークアートの画家として活躍したモード・ルイス。北米を中心にフォークアートとは、片田舎で暮らす、独学でアートを学び、描いた画家達の分野をさします。ヨーロッパでは、ピカソが取り上げたことで一躍脚光を浴びたナイーヴ派の画家と同じ位置にあります。彼らはの大半は、趣味の延長で絵を描いていて、決して恵まれた画家ではありませんでした。
今回映画となったモード・ルイスは、若年性リュウマチに手足が不自由な中で、絵を描くことに生きがいを見出した女性です。その作品は、自由奔放な筆さばきで自然や日常生活を描き、豊かな色彩と心和む作品です。
物語は、両親を失い、借金を抱える兄が家を売り払い、伯母の元にいたルイスが、絵を描くために家を出るところから始まります。ルイスは、町の偏屈者で魚の行商で生計をエベレットの家に家政婦として住み込み、言い争う中で、次第に心を通わせ二人は結ばれます。ある日、ルイスが描いた一枚のポストカードがエベレットの客の目にとまり、北米で話題となります。ルイスは、病が進む中で好きな絵と愛するエベレットに看取られ生涯を終えます。
ルイスを演じたのは、シェイプオブウォーターで半魚人を愛する女性を演じたサリー・ホーキンスが演じ、夫のエベレットには、アカデミーの常連イーサンホークが演じていますが、世間からはみ出し者と言われた二人を、時に激しく、時に優しく、二人の深い愛の関係をナチュラルに演じていて感動しました。
芸術の世界は、卓越した技術と高い発想に裏付けられた巨匠の作品とは別に、観た瞬間に心を奪われ魅了される市井の画家が存在します。そうした人々に光をあてるのも、こうした作品の使命だと改めて思いました。