本年度アカデミー賞ドキュメント部門でオスカーに輝いた「シュガーマン・奇跡に愛された男」を観賞。
1968年、デトロイトの場末のバーで歌う一人のメキシコ系移民の男の歌が大物プロデューサーの目に留まりデビューを果たすもヒットに恵まれず、2枚のアルバムを出した後に消息不明に。
そんな彼の歌が、南アフリカの若者たちの支持を得て、アパルトへイト(人種隔離政策)に抵抗する反戦歌として貢献、そんな彼の消息を追って奔走する人々によるドキュメント映画です。
彼の名はロドリゲス。コンサート中に拳銃で自殺したと言う噂なかでの中で、彼は日雇い労働者として三人の娘を育てるために懸命に生きていました。
彼の才能を語る音楽関係者のインタービューよりも、彼と共に生きた名も無き人々の彼への敬愛は、音楽と言う武器で、苦しい生活の中で生きる人々と戦うロドリゲスへの優しさにあふれたもので、彼の人生そのものを語るメッセージを感じました。
そして、彼により悪政から解き放たれた南アフリカの人々が、彼を迎え入れコンサート会場を満員の聴衆でうずめ、彼のメッセージに熱く呼応するシーンは、わずか50名ほどの小さな映画館内にいる僕でさえ、鳥肌が出て心が揺さぶられる感覚を持ちました。
シーンごとに流れる彼の歌声と革命詩人のような力強く美しい言葉は、他にみないものでした。
時代に翻弄されることなく、平凡な日常を生きながら凛とした心を持つロドリゲス。彼こそが、本当のアーティストだと思います。
この映画を観て、生きる意味を改めて確かめることができる作品だと思います。