待ちに待ったという感じで「のぼうの城」を観賞してきました。当初は、昨年秋の公開でしたが、水攻めシーンが東日本大震災の影響で延期になりました。待つこと1年。ひとことで期待通りの作品でした。
物語は、ご存知の通り、20000人の豊臣軍に500人で対抗した無謀な軍将を描いた作品で、原作のベストセラーにより映画化が実現したノベライズ作品です。
先ずは、でくのぼうの異名を持つ成田長親を演じる野村萬斎が秀逸です。特異なキャラクターが、まさに狂言師のそれで舞台を戦地にした狂言を見ているようで、笑いながら泣けます。
特に話題にもなっている、水攻めにされた城から小舟に乗り、自らの命を賭して敵陣に向かい舞い踊るシーンは、萬斎でしか出来ないもので。映画の重要なカギを握り、その奇策が実を結んでいきます。
味方、敵共に脇を固めるキャスティングも的を得ていて、長親を支える武将の佐藤、成宮、山口に敵陣の山田、平も好演も光ります。敵将、石田三成を演じた上地も、おバカキャラが邪魔してか賛否が分かれるようですが、見えない敵将の長親に次第に魅了されていく三成像をうまく演じていたと思います。
のぼうの城は、喜劇を通して観る人に元気と勇気を与える魅力があります。成田長親は、権威や権力で人心を恐怖で支配するのではなく、国を支える民衆(映画では百姓)の心を掴み、民のために自らを犠牲にする無私の心が描かれています。人心を掴む術が、でくのぼうの姿だと感じました。
術に優れていなくとも、誰もが持っている素の姿が、本当に人を惹き付ける力になっているのではないでしょうか。そのことをこの映画は教えてくれました。