透明人間たちのひとりごと

機心 機械中毒 依存症

 出勤して来て、まず最初にする事といえば、事務所の清掃
をするわけでもお茶や珈琲を淹れるわけでなく、いの一番は
パソコンのスイッチをオンにすることです。

 それから少し離れた給湯室に向かいヤカンを火にかけて
から急いでデスクに戻り、電子メールや添付資料のチェック
を始めるのですが、大抵の場合はそのままパソコンの画面
に集中してしまい、ハッとして気付くとチンチンとなったヤカン
の中身は見事に空っぽになっているのです。

 いくらチェックに夢中となっているからといって 他の社員が
いるだろうし、そもそもヤカンが空焚きになるまでには相当の
時間が必要な筈だと訝(いぶか)るむきもあろうかと思います
が、そんな疑問をお持ちの方々 … … そうなんですよ。

 朝は他に先駆けて出社して … ではなく、現在、事務所に
出勤するのは透明人間1号である私だけなのです。

 従ってヤカンの中身は、当面必要となる珈琲1杯分程度の
水の量しか入っていないのです

 保温式電気ポット(2ℓ)があるのですが、時節柄と言うのか
人並みに節電をしてムダを省こうとする意識から必要最低限
のエネルギーでお湯を沸かそうとの魂胆です。

 ところが、そんな目論見は見事に外れて …

 現実には、火のムダ焚き以外のなにものでもないばかりか
ヤカンをムダな熱でだだ劣化させているだけで、エネルギー
のムダ使いとともにモノを粗末に扱い大切に管理・利用して
いないことにもなっているのです。

 そこで件(くだん)の空焚き防止策として、広口笛吹ケトル
(2.5ℓ)を購入したのですが、こちらもまた、沸かす水の量が
少ないせいなのか、蒸気の膨張に限界があって吹き損ない
の口笛にもならない程度の音さえも発してくれないのです。

 仕方がないので沸くまでの数分間だけその場で待ってみる
ことにしたのですが、これが意外と長く感じられて、どうにも
我慢ができずにデスクに戻ると、もうヤカンのことはいっさい
脳裏をかすめずに画面とにらめっこの状態になるのです。

 結局、ムダな時間を省こうとして、ムダにエネルギーを消費
するムダな空焚きが毎朝のように繰り返されているわけで、
余計な時間を割いてその後始末に追われている様(さま)は
浅はかさを絵に描いているようなもので、我ながら情けなく
悲しい気持ちでいっぱいになるのです ase

 … ですが、翌朝になると、また珈琲一杯分の水をケトルに
注いでコンロの火にかけるのですから、懲りないというのか、
ある種の偏執的な気質に犯されていると理解するすべきか
ともかくも無益どころか損出の再生産を繰り返しているという
自覚があるにもかかわらず、まるで 日課行事であるかの
ようにルーティン化していてなかなか止められないのです。

 そこで、無い知恵を絞って考えてみたのです。

 僅(わず)か数分間のことですからその場で沸くのを待てば
余計な熱量の消費と後始末に費やすムダな時間と労力との
浪費は防げますが、ただ、ぬぼーとして突っ立っているだけ
の時間はやはり勿体ないようにも感じます。

 要するに、お湯を沸かしていることに意識が向けば、適当
な時間にパソコンのチェックに区切りをつけて無事に珈琲を
嗜むことができるわけですが、パソコンを開くと 終(つい)ぞ
画面のなかに入り込んでしまうわけです。

 仕事に追われているわけでもなく時間がないわけでもない
のに、頭の中からも心の中からもヤカンの湯もコンロの火も
珈琲のことさえも消え去っているのです。

 つまりは、さほど忙しくもないのに … 時間を惜しんでまでも
デスクに戻り、パソコンという奇妙な物体の虜となって自らの
心を亡くしてしまっているのです。

 決して忙しくもないのに心を亡くさせる脅威の魔力 …

 心を亡くすと書いて 「忙しい」 と読ませるのは、はるか
昔のこと … になってしまうのかもしれません

一体、何が言いたいのかと申しますと
 
 私は、アナログ人間 の類なのですが、こんな時代
に後れまいと、最低限度のパソコン操作だけは覚えました。

 もちろん、使いこなすには程遠い 「〇〇の手習い」 レベル
で精一杯の状態ですが、それでもパソコンインターネット
が仕事のみならず日常の生活においても欠かせない存在に
なっているという事実を素直に認めざるを得ないのです。

 とはいえ、便利さと引き換えに失っていく 目に見えない多く
の事柄のなかに大切な何かがいっぱい詰まっているようで、
そうした気付き難い物事の重大さと価値の喪失に言い
知れぬ恐怖を感じているのもまた事実なのです。

 ここで指摘しておきたいことが二つあります。

 ひとつはすでに、おそらくは、私も含めてそうであるように、
こうしたインターネットの社会に翻弄され機械に振り回され、
支配されているという事実です。

 もうひとつは本質的な意味合いでムリ・ムダ・ムラのない
エネルギーの使われ方がなされているのかということです。

 前者については、ネット中毒やスマホ依存症といった病理
学的な問題以外にも、最近の出来事に 「遠隔操作ウイルス
による第三者のなりすまし事件」 がありました。

 気が付かないうちにパソコンがウイルスに感染して他者に
乗っ取られてしまうと犯罪がらみの内容であっても好き勝手
に、それこそところ構わずに書き込まれてしまうわけです。

 「殺人予告」「誹謗中傷記事」 など …
容赦なく自由自在にやりたい放題です。

 ネット社会では、誰しもが身に覚えのない犯罪の加害者に
仕立て上げられる恐れがあるわけで、そうなると自己責任の
及ばない自分の意思とはまったく無関係の世界での出来事
であっても、その結果責任を負う破目になりかねません。

 いえ、すでに私だけでなくあなたも含めて多くの人間たちが
パソコンやインターネットに依存した生活を送っている以上、
その危険性からは逃れられないはずです。

 他にも、最近よく耳にするネットバンキングの不正送金の
問題も看過できないネット関連の事件ですし、音楽や映像の
違法ダウンロード(ネット上に違法にアップロードされた音楽
や映像をダウンロードした場合に刑事罰が科せられる)等の
問題も合法か違法かの判断に曖昧な部分が残されたままに
10月1日から改正著作権法として施行されました。

 さらには、口コミサイトに業者が大量に ヤラセ投稿 をして
消費を誘導するようなステマ(ステルスマーケティング)も
大きな弊害のひとつと言えるでしょう。

 ことほど左様に …

 機会あるごとに奇怪機械であるパソコンが思いも寄らぬ
災難の脅威となる奇禍威(きかい)となっているのです。

 知らず知らずのうちに機械に支配され操られて右往左往
させられる哀れなマリオネットになり果てるのです。

 これこそが 老子 の云わんとする 「機心」 = 機械に
依存して機械のになってしまい人間本来に備わっていた
さまざまな能力を失ってしまうという 「機械依存症」
「機械中毒」恐怖 なのでしょうかeq


 「機械あれば必ず機事あり、
      機事あれば必ず機心あり」



 『荘子』 天地篇にみえる 老子 の反機械論的な話は
『アリとセミの物語<10>』 に詳しいのでそちらを
ご参照ください。

exclamation http://sun.ap.teacup.com/japan-aid/219.html(参照) 

 さて、今日は文化の日です

 いま現在までのところでは、人間は道具を発明することで
他の動物との身体的な能力の差を凌駕して、差別化を図り
、生態系の頂点に君臨していますが、今後も文明や文化を
引き続き継承して行けるのでしょうかquestion2

 道具や機械を使うことは人間の本来的な部分に属する性
(さが)なのかもしれませんが、相対的に何か別の能力
犠牲にして獲得する性質のものなのかもしれません。

 機械があれば、効率良く、より多くの仕事がこなせます。

 しかし人間は、もっと早く、より効率的に、さらに楽に仕事を
こなすような機械を求めて止みません。

 肥大化する人間の欲望には際限というものがないのです。

 現代は、老子荘子の時代とは違ってケタ外れの
スケールで進歩(退歩)した成熟社会、否、爛熟社会
すべてが複雑に交錯しています。

 万事が機械的であって法律も社会構造も複雑に交錯する
そのスピードに追いついて行けないのが現状なのです。

 複雑ゆえに一旦、故障やトラブルが発生すると大混乱で、
もうお手上げ状態です。

 ボタンひとつで出来たことに手も足も出ないのですから …

 銀行などの ATM しかり、駅の 改札口 しかり … です。

 本来アナログである人間が機械のスピードについて行ける
わけがないのが道理です。

 常識的にいえば、複雑なものと単純なものならば、単純な
ものの方が効率がいいに決まっています。

 ですから

 後者にあたる本質的な意味合いでのムリ・ムダ・ムラ
ないエネルギーの使われ方も 老子 風にアナログ的
単純化させれば解決がはかれます。

 早い話が原始生活に戻ればいいだけのことなのです。

 むろん、そんなことは不可能な与太話に決まっていますが
現代人が抱えるストレスの多くは、その原因を「機心」
求めることが可能です。

 複雑に絡みあった現在社会の病苦を2500年以上も昔に
「機心」 として暗示していたのは 老子です。

 これから先の未来に

 ひょっとして、大きな口をポッカリと広げて待っているのは
<機心地獄> という落とし穴かもしれません

 むべなるかな … さもありなん …  って、

 こんな終わり方では、明日の朝のヤカンの運命は、きっと
チンチンの空焚き状態なのでしょうね

 、明日は、お休みですって …

 そいつは、

 どうも、すいません

コメント一覧

林森ジャングル
むべなるかな。
猫パンチ
いま流行りのAIを機械と言ってしまっていいのか?

アイアイなら「お猿さんだ」と言えるのだが( ^ω^)
周回遅れの老爺心
今は車も電気系統が故障したら手も足も出ないくらいに、
何もかもが自動化していて、エンジンすらかけられない
不安があるよなあ!
笛吹童子
コーヒーカップ一杯分の水でも、沸騰すればケトルの笛は
ピーピーと唸るはずだよ!
AI
単に、笛吹ケトルが壊れているだけじゃないですか?
半熟マン
機心が暗鬼を発するが如きのペニーオークションと芸能人たちの
ステルスマーケティングってことですね!
透明人間1号
そうですね。 それで空焚きの不安は完全に解消されますが、
わざわざ笛吹ケトルを買った意味が … ???
ココナン
最小限の量の水を電気ポットに入れて沸かせばそれで解決です。
バカボンのパパのパパ
<疑心地獄>はバカボンのパパじゃなくワシの専売特許なのだ!
えっ、「ぎ」じゃなく、「き」だから、点で違うのだって …
それならチンチンはヤカンじゃなくて犬の芸なのだ!!!
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