この頃、オットが帰ってくるまでの間に、Hank Jonesの"LAST RECORDING"を聴いていることが多い。
そして、何をしていても、そのアルバムのあるところにくると、目を閉じ、静かに聴き入ってしまう。
"Fly Me To The Moon"-彼の弾くこの曲は私の心の一部を何度でも震わす。
同じ曲を他のアーティストの演奏で何回も聴いてきたはずなのに。
そこには哀しみと優しさが入り交じっている。
最初の方は哀しみという哀しみが静々とひたひたと舞い上がる。
でも、そこには救いがあるのだ。それは、何もかもくるんでしまえるような
優しい音色だ。
私が彼の本当のところを知り得るはずもなく、むしろ私の持っている彼の情報は"ミスター スタンダード"と呼ばれ
まるで職人のように、ピアノの練習を晩年まで欠かさなかったというくらいのものだ。
しかし、私は彼がただの”ミスタースタンダード”ではないと、彼の奏でるピアノは訓練だけによって得たものではない、と確信している。
当たり前の考えだとは思うけれど、私はそれをここに書き残したいと思うほどに、彼のピアノには何かがある。
それを少しでも垣間みたいと、今夜もじっと彼のピアノに耳を傾けるだろう。
(画像は幼い頃、祖父に買ってもらった私のピアノです)