はっきりといつから、とはいえないのだけど、
秋が深まり、朝の冷え込みが日に日に強まり、
いよいよ寒さも本格的になってきたぞ…と感じる頃になると
「Hay Caldo カルドあります」
の貼り紙が、バルの入り口や店内に見られるようになる。
カルド、というのはいわゆる“ブイヨンスープ”のこと。
もしくは“スープストック、ブロス(英)”、“ブロード(伊)”とも言うようですが。
もちろん肉や魚、野菜と素材によって数々の種類のカルドあり。
美味しいスープや煮込みの大元となる、料理のハハ的存在。
もちろんそのままでも供される。
そしてわざわざレストランに入らずとも、バルのカウンターにて、カップ
でさっくりと手軽に飲める。
お値段1~2ユーロ程度で、アツアツが出てくる。
大抵「ちょっとシェリー酒(もしくは白ワイン)を入れますか?」と訊かれ、これはお好みで。
コーヒー紅茶じゃない、お酒でもないんだけど…という時に
このしょっぱ味が実に美味しく、体を芯から暖めてくれる。
● インスタントに押され気味…
…という冬の楽しい、暖まる代名詞~などとさくっと書き留めるつもりが、
この「カルドあります」貼紙のあるバルが意外と少なくなっていることに気づき、焦る。
なんでかって…そりゃもう想像つくでしょう。
冬の欠かせないアイテムとして、飛ぶように売れている模様
スーパーに行きゃ固形タイプから、暖めるだけのブリックタイプ、
味も豊富に、手頃なお値段で簡単に手に入るんだから。
子供なんぞ、この既製品の方が美味しいなどと言い出す始末。
何時間も食材を鍋でグツグツするなんぞ、面倒くさいこと
誰が今するんだ?ましてやピンチョなぞ冷凍モノをチンして
へーきな顔で出してるバルがどんどん出てきてるし(怒!怒!)。
● 自作してみたら…
と、人に当り散らしててもしょうがないので、自作。
ちょうど友人バルより「生ハムの肉を落としたあとの骨」
を大量に頂いた↓。
ありがたいが、ひるむ程の量…
▼材料
-生ハムの骨
-牛骨
-鶏がら
-ひよこ豆を二掴み位(前日から水で戻す)
-野菜くず(にんじん、たまねぎ、セロリ等根菜系)
▼作り方
上記のものを大鍋に放り込み、水でヒタヒタ、
湧いたら火を緩めて丁寧にアクを取りながら三時間煮込む。
漉して、塩で味を整えて完成。
パスタなど具に入れて頂きます。
▼感想
恐らく誰にでもできるレベルの調理。但しアクを真剣丁寧に取ること。
製作すること3回目位に、「え?これプロ級じゃん?」と独りほくそ笑みます。
生ハム骨とひよこ豆投入が、一般のブイヨンスープをスペイン風にするポイントかと。
● 昔から続く、小さな冬の楽しみ
上記自作してみたカルド、「コシードのスープ/Caldo de Cocido」とも言われる。
肉や野菜、豆などを入れた具沢山スペイン風シチュー、ポトフがこの「コシード」
なるもので、その具なしスープといった所か。
この「コシード」の話は超長くなるのでいずれ…
スペイン全国区で、「カルドあります」と言われて出てくるのはほぼこの味。
もしくはより洗練されたコンソメになると思われる。
最初は“常連さんへの、“小さなおもてなし”として出されたとの話。
(なんか“暖まってくだせぇ…”とかでおでんツユとかを供する感じw?)
スペイン北部の街、ビルバオの旧市街では「カルド・コンテスト」なるもの
も開かれ、現地参加のバルらによってその味を競ったとのこと。
1839年(天保10年)より創業、由緒正しきマドリッドの誇る老舗レストラン、「ラルディ」。
1階バル部では、お客のセルフサービスによるカルドの提供が。
磨き上げられた銀のサモアールがなんとも素敵。
ここのコンソメは有名。
…という話を読んでいると、小さくも、恐らくこれからも消えない習慣か…
と強い希望を込めつつ思ったりする。
それを応援するかのように、最近「生ハムの骨からとったカルドが
心臓・血管疾患の予防を助ける」という研究結果が、スペイン高等科学研究院
から出されたとのニュース。
その上…なんと昨今では“ニューヨーク発信”とやらで「ボーンブロス」
なるカルドが、おしゃれでヘルシーフードとして大流行したとか。
「こういうフッツーのもんを今出てきたみたいにしてな、
流行らすのがうまいんだよ!奴らは!」
…などというスペイン人の歯軋りを交えた雄叫びが聞こえそうですがw
いやいやww
おしゃれ創作ピンチョに食べ飽き、“今Ramenが熱い!”とかグルメ気取り
してたあなたですよ!
今すぐおばあちゃんに電話して、特製レシピを訊いてきなはれ!
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