ハロウィン騒ぎにごまかされてたけど、もう年末はすぐそこ。
クリスマスグッズや菓子なんぞはとっくの昔に販売開始。
そして…来年用のシステム手帳や、カレンダー。
スマホの普及で随分少なくなったというけど、意外と根強く人気だそうで。
近所の古い文房具屋がさっそく売り始めた模様。
ジジババの多い、保守系の街らしく「イエスの言葉日めくりカレンダー」
「ローマ法王御姿カレンダー」などが定番で売ってる。
そして毎年みかける、このオレンジの暦本らしきもの…
これ。
表題 「サラゴサノ・カレンダー/天文暦/スペイン全土カバー2017年版」
この時期になると本屋やキオスクでちらほら見かけるんだけど…誰だ?このおっさん?
更に違うバージョンまで出てる。↓ 壁掛け用
↓生活暦+天文暦セットでお得(微妙に何がお得なのか知らんが…)
まいっ年毎年、この古本屋から出てきたようなデザインの小冊子を見かける年末。
現地人に聞いても意外に“へ?”って感じで知らない人が多い。
で、結局何かというと、
この方↑はマリアノ・カスティージョ・オクシエロ氏というサラゴサのとある村出身の方。
すでに19の齢から気象学を学び、独自の研究、調査により、天気予報システムを開発。
これで一儲けできるかも?と1840年(天保11年)にこの予想を含めた天文暦の発売してみた。
それがなんと初版から農村間で爆発的に売れた。
日本でいえば江戸後期。気象衛星もアメダスも、お天気お姉さん何もない時代。
その年の植付、収穫時期の決定に、農村の人々は頼るもの一切なし。せいぜい“村の古老の記憶”ぐらい。
そこに現れたこの小冊子。大変な信頼を受けたらしい。
“スペインのコペルニクス”なる、立派な紳士による天気予想。
日々の天文暦…日の入没の時間、星座、月の満ち欠けなど。
そして教会暦。日々の聖人名。(←どっぷりカトリックなこの国では重要)
スペイン全土における守護聖人聖女の日暦。
また全国で開かれる農作、畜産市のカレンダー。
ちょっとした諺や格言。
まさに実用一筋、ためになる小冊子!
農村各家庭には、恐らく聖書の横に必ずや見かけられたものと思われる。
(以前も書いた通り、スペインの文盲率は1900年で45%だったのだが…)
…それが初版から170年以上経ち、
表紙のデザインはちっとも変わらず、
天気予想のシステムも変わらず(著者の子孫が受け継いでいる模様)、
なんと未だ年間発売部数16万部越え!! 日本のヘタなトレンド情報誌より売れてるし!
信仰に近い信用を得てるのか?この暦本。
なんか日本で年末年始にみかける高島暦を思い出すな…↓
ま、それはおいといて。
現在では、このサラゴサノ・カレンダーなるもの、もちろん出版社のHPもあり、
詳しくのその歴史等を語っている。そして読者の方々とのエピソードも。
“ピレネー山脈にある小村より、毎年家族で街に買いに行きました…(90才の女性より)”
“ソリアの村々では毎年盲目のおこもさんが売りに来ており、道迷いをせぬようにとロバを貸したものでした(95才男性より)”
“自分の生まれ年の冊子を購入されたいというご希望を、多く承っております…”
などとなんとも牧歌的なしみじみな話を紹介している。
長年、スペインの農村の風景の中に溶け込んできた小冊子。ほぼ博物館行きながら未だ健在。
筆者、マリアノ氏はその生涯にてしっかりと成功を収め、若い婦人と三度も結婚し、54才にて逝去。
病床にあった最後の日に残した、大きな被害与える雹が降る…という遺言はしっかり当たったらしい。
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