思いつくまま、気の向くままの連載記事。
第3回『関東編その2』です。
東京2校を含む、首都圏のチームです。
≪選抜出場校 思い出編3≫
関東代表 東海大市原望洋(千葉) 2度目(7年ぶり)
夏1度出場 甲子園通算0勝2敗
有力校ひしめき、核となるチームを持たない千葉県高校野球界。かつては銚子商、習志野がしのぎを削った時代があり、拓大紅陵が席巻していた時代がありました。しかしここ20年ほどは、全国でも屈指の出場校数を誇るマンモス大会でありながら、毎年優勝の行方が混とんとする、戦国大会が繰り広げられています。その中で2010年前後から優勝争いに”参戦”してきたのが、千葉県で2番目の『東海大付属』である東海大市原望洋です。ワタシがその名前を刻み込んだのは、やはり09年の真下投手を擁した年ぐらいからでしょうか。真下投手は残念ながら甲子園の土を踏むことはありませんでしたが、その翌年の選抜で長友投手を擁して選抜初出場。その後も『望洋の好投手の系譜』は続き、昨年は島投手が注目を集めました。そして、今年のチームもまた、金久保投手という大黒柱を擁して、2度目の選抜に挑みます。好投手がどうしても目立ってしまうというチームカラーの下、打線の強化が急務のチームであることは明白でしょう。これまで甲子園では、春も夏も力を出すことなく甲子園を去りました。しかしながら、甲子園に出た時はいずれのチームも、『東海大望洋にいい投手がいて、注目が高い』という年のチームではなく、全員野球でしぶとく勝ち上がるチームでした。今回は金久保投手を擁して、ようやく『投の望洋』を前面に押し出した戦いができるチームですから、期待は高いと思います。勝ち上がるのはなかなか骨が折れるものの、激戦区を勝ち抜いてきたチーム力を発揮して、甲子園に乗り込みたいところです。
東京代表 早稲田実 21度目(4年ぶり)
夏29度出場 甲子園通算 65勝47敗 優勝2回 準優勝3回
学生野球の代名詞といえば、やはり早稲田大学。そして高校野球の代名詞といえば、東京ではやはりこの早実が上がります。何しろその歴史は古く、第1回選手権出場校のうちの1校ですからね。『オリジナル10』のうちの1校ということで、常に『名門』というくくりで語られるチームです。チームは2度、『名門』から『古豪』という呼ばれ方をされそうになったときがありました。一つは昭和40年代。王さんや大矢さんなどのキラ星のごとく輝くスターを輩出してからしばらく、早実が低迷を余儀なくされた時期です。昭和38年に選抜に出場してから、昭和50年夏に復活するまでの12年間、早実は甲子園に出場することがかないませんでした。ちょうどその低迷期に高校野球を見始めたワタシにとって、当初『早実』という名を聞いても全くピンと来ず、東京は日大勢が甲子園に行くものと思い込んでいました。その流れを変えたのが、和田監督が率いる荒木兄弟の時代。昭和52年に強打を引っ提げて久しぶりに甲子園で大活躍した早実は、内野手として攻守に素晴らしいプレーを見せていた荒木健二の活躍などもあり春夏ともに8強へ。更に強いといわれた53年のチームは荒木、山岡、川又など素晴らしい選手が揃い春、夏ともに優勝候補に挙げられていたものの甲子園では1勝しか挙げられず、早実悲願の全国制覇はお預けになりました。しかしこの2年間で4季連続の甲子園出場。東京は『早実の時代』となったのです。荒木健二は53年限りで卒業しますが、その弟の荒木大輔が入学した昭和55年から、早実はまさに『黄金時代』というものを築いていきます。とにかく都会的でスマートなチームカラー。そしてリトル・シニアで鍛え上げてきた選手たちは野球をよく知っており、東京には早実を破ることができるチームは、見当たりませんでした。荒木大輔は1年生の夏、甲子園で初戦から決勝の1回まで無失点記録をつづけ、大フィーバーを巻き起こしました。もとより今と比較して甲子園大会というものが世間の大きな注目を集めていた時代。”荒木フィーバー”は、後の”斎藤フィーバー”、そして現在の”清宮フィーバー”よりも、すごかったような気がします。その荒木を支えた”牛若丸”小沢とともに、早実は昭和55~57年の間、高校野球を席巻した存在となりました。5季連続の甲子園出場というのは、今でこそ桑田・清原のPLを筆頭にたくさんの選手が成し遂げていますが、当時では本当に珍しかったこと。それだけ注目を集めながら結果を出し続けた荒木大輔を中心としたこの当時の早実は、本当の意味の”強さ””したたかさ”を持っていた感じがします。しかしながらこの時代をもってしても早実の全国制覇の悲願はならず。そして早実は、荒木大輔が卒業すると同時に力を落としていき、低迷の時代に突入します。
その当時は、入試が難しくなりすぎて、これまでのように好選手を入学させることが難しくなったということが言われ、時代は帝京の1強時代へと変わっていきました。その当時、東東京に属していた早実。毎年夏の大会になると『名門の矜持』を見せて上位進出を果たし、帝京と対戦するとすさまじい激闘を見せることもありましたが、何しろ80年代~90年代にかけての帝京は強かった。早実vs帝京の試合を予選で見ると、テレビに映る選手たちの体格のあまりの違いに、『ああ、こりゃあ分が悪いなあ・・・・・』と最初から思わざるを得ないような差がありました。当時の帝京、そりゃあ凄いゴッツイ体をしていました。なかなか好投手が育たなかった当時の早実は、最後の最後には帝京の打力にねじ伏せられてしまった・・・・・そんな印象を持っています。選手の自主性を重んじながら結果を出す名将・和田監督も志半ばで急逝。早実にとっては厳しい時代が、斎藤の登場する2006年ぐらいまで続いていきました。
斎藤の登場は、早実、いや、早稲田グループが本格的に再度スポーツの強化を始めたことに起因します。『名門復活』は、”自ら助くる者を助く”天の差配があったか、2006年に訪れました。東東京から西東京に”移転”してきた早実にとって、そこには”天敵”帝京はいなかったものの、2001年に全国制覇を成し遂げ、強豪の名をほしいままにしていた古くからのライバル・日大三が君臨していました。投手力を中心に守りの野球を標榜し、スマートな試合展開を得意とする早実に対して、小倉監督が鍛え上げた日大三は、打力でねじ伏せるスケールの大きなチームでした。2001年に悲願の全国制覇を達成した日大三は、その後も2005年まで毎年甲子園に進出。早実にとって、『どうしても倒さねばならなかった敵』ではあったものの、『どうしても倒すことのできない敵』でもありました。そしてその『大きな壁』を打ち破ったのが、ご存知の”ハンカチ王子”こと斎藤佑樹投手です。この年選抜に出場した早実は、名門復活を高らかにアピール。2回戦では強豪の関西と延長再試合を戦って勝利をおさめ、8強まで進出しました。そしてこの夏。西東京大会決勝で日大三との『東京の高校野球史に残る激闘』を制した早実は甲子園でも快進撃。決勝であの甲子園三連覇を目指した駒大苫小牧を、春に続いて延長15回引き分け再試合になった激闘を制して優勝。日本中に『ハンカチフィーバー』を巻き起こしました。早実にとっては、荒木大輔に続く『社会現象』を巻き起こした年でした。
その後はご承知の通り。長い低迷期を抜けた早実は、今もまた日大三と≪全国屈指≫ともいえるライバル関係を維持しながら着実にその実力を伸ばして、一昨年夏には【第三の社会現象】ともいえる≪清宮フィーバー≫を巻き起こしました。第一の荒木大輔は、兄弟で早実に確かな足跡を残してくれました。第二の斎藤佑樹は、卒業後は早稲田大でさらなるフィーバーを巻き起こしてくれました。そして第三の清宮は、父親とともに親子でフィーバーを巻き起こしています。王貞治さんの時代から、『何年かに一度、必ず日本中に話題を振りまくスーパースターが現れる』というのが早実野球部。今度はどんな戦いで、我々をワクワクさせてくれることでしょう。
そして個人的には、早実の野球というのは、強さの裏に見え隠れする弱点、どの年代のチームもそれを持っているというところもまた、なんだか男心をくすぐられるところですね。『完璧な強さなんて、求めちゃいない!』と言っているようにも聞こえる早実という好漢。彼らがまた甲子園で暴れる姿を見ることができるのが、東京都の高校野球ファンとしては、とてもうれしいことですね。
東京代表 日大三 19度目(6年ぶり)
夏16度出場 甲子園通算 49勝31敗 優勝3回 準優勝3回
さて、早実の記事を書いた次に日大三の事も書けるなんて、本当に幸せな選抜となりました。早実は選手権第一回大会から甲子園に出場していますが、日大三も戦前の昭和13年に初出場。それから長い歴史を刻んでいる名門チームです。幼少時の記憶から紐解いてみると、1971年の選抜初優勝に輝いた日大三の姿が、鮮やかによみがえってきます。たぶんその前年ぐらいから甲子園というものを見始めたワタシにとって、優勝した日大三は『優勝した東京のかっこいいチーム』という印象ですね。そしてさらに鮮明に覚えているのが、その翌年の選抜大会。決勝がまさかまさかの東京決戦、しかもどちらも日大勢である日大桜ヶ丘vs日大三というカード。『野球がめっちゃ強い日大』という刷り込みは、いまだにワタシの頭の中に、ありますね。この対戦でのワタシが強烈に印象に残っていることは二つ。一つは、やはり日大桜ヶ丘・ジャンボ仲根投手の剛球。そしてもう一つは、『決勝なのに、めちゃめちゃスタンドがガラガラだったこと』。やはり東京勢同士の決勝ということもあったのでしょうか、そして天候もいまいちだったような。。。。。。。『それにしても空いているなあ』という印象は、いまだに消えることがありません。(当時は決勝だからと言って、お約束のように満員になることはなかったという記憶がありますね。)
そんな『ワタシの幼少時の記憶』に深く刻み込まれた日大三というチームでしたが、その後は小倉監督の就任までの間、いまひとつの時期が続きました。その準優勝の年から、日大三の甲子園で『本当に活躍したなあ』という活躍が見られるまでには、およそ30年ぐらいの時間がかかります。今や完全に『ユニフォームで相手をビビらせる』ことができる日大三ですが、80年代、90年代などは時折甲子園に出場するも今一つ存在感を見せられずに敗れ去ることが多く、多くのオールドファンが気をもむ時期が長かったですね。しかしながら、OBであり関東一で甲子園準優勝も経験した小倉監督が母校に帰り監督に就任すると、本当にガラッとチームは変わりましたね。監督の就任は97年だそうです。日大三の監督になって、今年で20年ということですか。その間に、それまでどちらかというと投手を中心とした守りの野球だったチームカラーを、『強打の三高』に完全に塗り替えました。2001年の夏の選手権初制覇のチーム。1番の都築から、3番内田、4番原島と続く打線は、本当にすごかった。前年夏の甲子園を制覇した智弁和歌山の打線を見てワタシは、『こんな打線のチームは見たことがない』と思ったものですが、翌年の日大三の打線を見ると、『去年の智弁より、もっとすごい』と驚愕しました。小倉監督のキップの良さがチームに浸透した『お祭り打線』の凄さは、今に至るまで日大三の素晴らしいチームカラーになっていますね。初優勝の後も、小倉監督は毎年強打のチームを作り上げて甲子園に乗り込み、存在感を見せ続けています。そして二度目の優勝は2011年夏。このチームも本当に、素晴らしいチームでしたね。エース吉永に、畔上・横尾・高山のクリーンアップの破壊力は、『これが高校生のチームなのか』と驚愕しました。ワタシの長い観戦歴の中でも、『高校野球史上最強の打線は?』と言われれば、この2011年の日大三のチームをあげることでしょう。それほどすさまじいものでしたね。日大三については、東京というだけでなく、所属する地域も同じなのでまさにワタシの『地元のチーム』そのもの。いつも真っ先に応援するチームです。そして、応援されるに値する、本当に気持ちのいいチームだと思っています。小倉監督の性格そのままのキップの良さ、これからも失ってほしくないですね。日大三の野球、時にうまくいかないときは淡泊に見えたりして、『粘りが足りないんじゃないの?』なんていう声も聞くのですが、ワタシは『いいじゃないか、それが三高の持ち味だもん』と思います。ちょっと気の弱いところが見えたり、押されちゃったりヒルんじゃったりするところがあっても、はまった時の爆発力は他の学校にはない魅力を持っています。『完璧なチームなんて、見ていて面白くないじゃん!』そんなことさえ思わせてくれる、ある意味”かわいらしい”発展途上のチーム。それが日大三だと思いますね。
今年のチームは、三高らしい豪快さともろさを兼ね備えた、『まさにはまったら、どこまでも行っちゃうよ~~~』というチームだと思います。選抜では果たして、表が出るのか裏が出るのか。。。。。。。今からドキドキ、ワクワクしています。
選抜選考の時は、『何が何でも今年のチームには、甲子園の土を踏んでもらいたい』と思っていましたので、選考されたときは嬉しかったですね。がんばってほしいと思います。
彼らが外をランニングしているときにすれ違うと、こんな何の関係もないおっさんにまでも『こんにちは!』といつも元気に声がけしてくれるチームを、ワタシは”熱烈応援”しています。
(つづく)
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