≪第96回全国高校野球選手権≫
【決勝】
三 重 (三重) 020 010 000 - 3
大阪桐蔭(大阪) 011 000 20× - 4
大阪桐蔭 輝く4度目の優勝!スター選手不在の、全員野球の結実!
大阪桐蔭高校。
4度目の夏の甲子園優勝、おめでとうございます。
素晴らしい戦いに、
47,000人と満員に膨れ上がった観衆も、
その一投一打に酔いしれました。
一昨年春夏連覇を達成した大阪桐蔭。
その一挙手一投足が、
高校野球界ではいつも全国から注視される、
『高校球界の盟主』
の座に上り詰めました。
これまでの3度の優勝。
そして全国制覇できずに敗れた大会でも、
必ず大阪桐蔭のチームには、
注目される『大会屈指』ともいえる投打の軸が存在しました。
その軸を中心に、
周りを固めるレベルの高い選手たちがそのレベルにまで昇華して、
勝ちをもぎ取っていくというのがその野球の特徴だったと思います。
かつて70年代~80年代に高校野球界でさん然と輝きを放っていたPL学園も、
そんなチームでした。
そこで言われ続けていたことは、
『やっぱりあそこは、素材のいい選手が集まるからね』
ということ。
大阪桐蔭に関して言えば、
確かに卒業OBのプロ野球での活躍ぶりを見れば、
『そうだなあ』
と納得してしまうものでしたが、
今年のチームは一味もふた味も違ったチームで、
この優勝こそは『大阪桐蔭の野球力』を存分に見せてくれたものだと思います。
大阪桐蔭ほど実績を残しているチームになると、
大阪大会や、あるいは甲子園でも、
相手が名前負けして勝手にこけてくれるケースというのは、
往々にして見られます。
しかし上位に行けばいくほど、
そんな試合は臨むべくもなく、
各校とも『アップセット』を狙っていつも以上に気合の入った攻守で臨んでい来るというのが常。
すなわち、
大阪桐蔭は常に『追いかけられる』という重圧を背にして戦わなければいけない宿命を背負っているともいえます。
そんななか、
今年のチームは、
『過去のチームに比べて、弱点もあるし、強みも例年ほどではない。』
と言われていました。
しかしながら、
大阪の準決勝で対戦したのは選抜準優勝の履正社、
そして決勝で対戦したのはかつての王者・PL学園という”超強豪”。
大阪桐蔭はこの”音に聞こえた”両チームに、
今年のチームの”強み”を見せて完勝。
『やはり、大阪桐蔭は強し』
をアピールして、
甲子園に3年連続で乗り込んできました。
高校野球ファンが”耳を澄ませて”注視した初戦は、
島根の開星が相手。
圧勝が予想された試合でしたが、
ふたを開けてみると初回に4点を先行され、
苦しい試合展開となってしまいました。
しかしじわじわと追い上げて、
『終わってみたら1点差で勝っていた』
という試合で辛勝。
この試合でデビューした今年の大阪桐蔭のチーム。
ある種の”弱み”も見せてしまったチームでしたが、
今振り返ると、
それ以上に”今年のチームの強み”を存分に見せつけた戦いでした。
この終盤にかけての粘り強さと、
試合の流れを引き寄せていける力は、
かつての大阪桐蔭には『欠けている』とされた部分です。
西谷監督が指揮するようになり、
西岡(阪神)、中村(西武)、岩田(阪神)、辻内(元巨人)、平田(中日)、中田(日ハム)など、
ほれぼれするようなスーパースターがチームに存在して最初の10年と少し、
素晴らしいチーム力を持っていながら全国の頂点に立てなかったのは、
やはりその”粘り”と”流れを引き寄せる力”が少し足りなかったからだろうと分析されていましたね。
PL全盛期との違いはまさにそこだ!
と言われていました。
しかしながら今年の大阪桐蔭の戦いぶり。
”粘り”と”流れを引き寄せる力”こそがチームの真骨頂だということを、
甲子園で全国のファンに見せつけてくれました。
2回戦の明徳戦で見せた、
序盤から相手の好投手・岸を打ち込んだ確かな分析力とそれを実行できる力。
準々決勝の健大高崎戦では、
相手の攻撃が自分のチームのディフェンスを上回るという、
想定外の出来事にもキッチリと対応し修正する力を見せてくれました。
準決勝の敦賀気比戦では、
5点の先制を許す苦しい展開も、
試合の流れを引き寄せるキャプテン・中村の反撃のHRから息を吹き返し、
粘りに粘って強打の相手を突き放す戦いぶりを見せてくれました。
そして今日の決勝では、
『完全アウェー』
の雰囲気の中、
ワンチャンスをしぶとく待ち続けて後半に逆転するという得意の形で、
真紅の大優勝旗を掴み取りました。
この毎試合に亘る苦しい戦いの中、
チームのベースになっていたのは、
なんといっても『素晴らしいディフェンス力』でした。
1回戦の8回、
一打同点の場面で難しいゴロをさばいたセカンドの峯本。
2回戦も、
その峯本が満塁のピンチの中セカンド後ろへの難しいフライをスーパーキャッチしてピンチを防ぎました。
準々決勝では、
流れが変わりそうなピンチで出たファースト・正随のダイビングキャッチ。
ショート・福田の再三にわたる攻守や、
キャッチャー・横井の冷静なリードも光りました。
そして決勝の9回2死という、最後の最後。
『はじいたら同点は必至』
という難しいショートからの送球を、
またも正随がスーパーキャッチ!!
『大ファインプレー』
が出て、この激闘を締めくくってくれました。
そしてこの試合、
西谷監督の『選手を信じ切る』采配が随所に光りました。
今大会の西谷監督。
チームが初回に4点、5点を失うという様な試合展開もあり、
冷静ではいられなかったと思いますが、
猛練習で鍛え上げた選手たちを最後まで信じ切って采配をしている姿が、
実に印象的でした。
決勝の先発は田中!!
ワタシはそう思っていましたが、
監督が選んだのは、
『3年生のエースに賭けた』
ということでエースの福島でした。
その福島の好投、
そしてチャンスにしぶとい逆転打を放った中村主将。
お立ち台に上がった二人の涙が、
見事だった大阪桐蔭を象徴していましたね。
思えば昨秋、
高校野球界に衝撃が走った、
『大阪桐蔭が府大会で5回コールド負けした』
というニュース。
そこから出発して選手を鍛え上げ、
この栄冠にまでたどり着いた大阪桐蔭というチームの【総合力】に、
深い敬意を表します。
見事でした。
この【脂の乗り切った】大阪桐蔭というチーム。
これからはますます、
『負けることが大ニュースになる』
チームとなるでしょう。
かつてのPL学園がそうであったように。
しかしこの学校の【総合力】、
並はずれています。
今後しばらくは、
『大阪桐蔭をどこが倒す?』
ということが全国の焦点になって来そうな、
そんな気配がします。
そしてその重圧を受けながら、
この【王者】がどこまで突き進んでいくのか、
大変に興味がありますね。
そんなことに思いをはせながら、
今年も『夏の終わり』を実感した一日となりました。
最後に敗れた三重高校へ。
残念な結果に終わってしまいましたが、
見事な戦いぶりだったと思います。
これまで『力がある』と言われてきながら甲子園で結果が出ずに悔しい思いをしていたと思いますが、
最後の夏に素晴らしい戦いぶりを見せてくれました。
センバツの敗退後に監督交代という苦しい状況を乗り越えここまでたどり着いた選手たちに、
本当に大きな拍手を送りたいと思います。
2009年の日本文理と同じ匂いのする、
『敗れたものの、最も印象に残った』
戦いぶりでした。
ただ決勝戦に関して言うと、
『勝てた試合だった』
という思いはぬぐえないのではないかと思っています。
決して批判をするわけではないのですが、
やはり最終試合においては、
西谷監督が選手を最後まで信頼しきった采配を行ったのに対して、
中村監督は今年4月に就任したばかりだったので、
その采配が『選手を信頼しきって・・・・』というよりも、
『決勝の戦い方とは・・・・』
ということに力点が置かれていたのではと感じました。
特に1点を勝ち越した5回無死1・2塁での主砲・西岡への送りバントのサイン、
7回1死3塁での3番・宇都宮へのスクイズのサイン、
そして9回1死1・2塁での、3年生の2番・佐田への、2年生の代打起用です。
これまでの勝ち上がり方とは違う”采配”をしていたように感じました。
大学野球界で長く采配をふるっていたベテラン監督らしい『決勝という特別な舞台での戦い方』だったことは想像に難くありませんが、
やはり『3年間ずっと選手を見続けてきた』西谷監督が、
最後の戦いにおいては選手を信頼しきって采配を振るっていたのとは、
少し違っていたのかな?
と思ったりもしています。
まあこれも、
結果論でしかありませんね。
監督就任から短期間で、
それまで結果の出なかったチームに結果をもたらしたという功績は、
決して色あせるものではありません。
ということで、
今年も『大団円』を迎えた夏の甲子園大会。
今年は球場が満員に膨れ上がるというシーンも多く、
雨にたたられた大会でしたが人気の盛り返しをひしひしと感じました。
雲は沸き、光あふれて・・・・・
『栄冠は君に輝く』
に謳われた夏が、
今年もまた日本列島を彩りました。
ここ大甲子園に集った、幸せな球児たち。
彼らは、
あの日と呼べる幾日を、時の流れに刻んだ・・・・・のでしょうか。
そして『高校野球オヤジ』のワタシはまた、
まためぐりくる夏の日に、心を震わせました。
既に各地で、
来年のセンバツに向けた地区予選がスタートしています。
来年は果たして、
どんなチームが出てくるのか。
また『実りの秋』を迎えるチームを、
この目で見るのが楽しみです。
毎回ながらこのフレーズで締めさせてもらいます。
今年もまた、
いい夏でした。
あ~~~本当に、面白かった!!