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16年目突入。ビッグイベントに心躍らせながら、草の根のスポーツの面白さにも目覚めている今日この頃です。

白鵬引退  大横綱は、名横綱たりえたか。

2021年09月29日 | 相撲

~スポーツ報知より~
大相撲の第69代横綱・白鵬(36)=宮城野=が27日、現役引退を日本相撲協会に申し出た。

不世出の大記録を残した平成の大横綱が、
その土俵人生に幕を下ろしました。

横綱・白鵬。

優勝回数は大鵬の32回の記録を大きく抜く45回。
横綱在位が84場所、
通算勝利数は1187勝。
そして双葉山の69連勝に迫る63連勝をも記録した、
誰も近寄ることもできない大記録を、
次々に打ち立てた第一人者でした。

2001年に入門した相撲人生は20年に及び、
07年の夏場所後に昇進してから14年余り。
あまりに長くすごすぎて、
初期のころの相撲はすでに思い出せないほどです。

しっかりとした踏み込みとどっしりとした型。
そしてしなやかな体で、
追い込まれてからのしのぎ切る相撲っぷりも見事で、
横綱昇進後の08,09,10年ぐらいはまさに全盛期でしたね。

先に綱を張り天下無双の体を成していた朝青龍に対しても、
07年以降は完璧に上回り、
優勝を重ねていきました。

10年に朝青龍が引退し一人横綱となってからは、
角界を背負っていくという気概を見せてまさに天下無敵強さを発揮しました。
春場所から全勝優勝を重ねるとともに連勝を重ね63連勝。
「双葉山の69連勝を超えるか」
と当時は世間の話題を独り占めしていました。

それほどに強かった。
何しろ09年、10年は年間に4敗しかせず、
86勝4敗という空前絶後の勝率を2年続けて達成。
まさに「白鵬時代」を謳歌しました。

順風満帆に見えた白鵬の相撲人生。

朝青龍との対比という事もあり、
強いだけではなく実直に相撲道を究めていく白鵬のその頃の人気はうなぎのぼりで、
孤高の横綱とも言われましたが「俺たちファンがついてるぜ」という感じで、
人気、実力ともに備わった大横綱でした。

しかし、
そんな彼の相撲人生も、
徐々になんというか、
雲が広がっていきましたね。


ワタシも10年代初頭までは、
白鵬を横綱として本当に立派だと思っていて、
すべての力士はおしなべて彼の姿、言動を見習っていくべしと思っていました。

第1人者が人格にも優れて、技術は抜群、
その素晴らしさに「酔っていた」といってもいいかもしれません。

野球界での王、長嶋の立ち位置に、
白鵬が立っているとさえ思っていました。

そんな白鵬に、
徐々に「おやっ?」と思う出来事が増えていったのは、
いつだったのか思い出せませんでした。

自ら描いたこのブログを紐解いてみたら、
大相撲についていろいろなことを書いていました。
もともとワタシがこのブログを書き始めたのは、
書くことが好きだったという事もあるのですが、
「大好きなスポーツで起こった出来事を書き記す備忘録」
という意味合いが大きかったのも確かで、
その時々に感じたことを後から紐解いてみるというのが楽しいからです。

そう思って白鵬について紐解くと、
彼が全盛を極めていた時分には、
同時に稀勢の里が何度も何度も、
初優勝、大関昇進、そして横綱昇進と挑戦しては跳ね返される歴史がつづられていました。

そして白鵬の鉄のような意志の力と、
土壇場になればなるほど力を発揮するマインドと稀勢の里を比べて、
ため息をつくようなことが多かったですね。

それほど白鵬は卓越した存在でした。

その白鵬が変わっていく萌芽を見せたのは、
2013年九州場所14日目。
大関・稀勢の里が5連覇を狙ってここまで全勝できていた白鵬に土をつけると、
お客さんが結びの一番そっちのけでなんと万歳三唱。

ワタシはこのことにブログで苦言を呈したのですが、
この頃からかなあ、
白鵬は「自分が勝っても喜ばれない」
事に対してなんというか、
違和感みたいなことを感じ始めていたのではと思います。

「自分は第一人者で、最も人気がある」
と思っていたところに対して観客から受けたこの「仕打ち」。
そして全盛期の07~10年ぐらいと比べて、
少し自分の力も落ちてきたというのを自覚することもあったんでしょうね。
それまでのどっしりとして泰然自若な姿から、
少しイライラが出てくるようにもなったような気がします。

そして14年の「日本でのおやじ」とも慕う大鵬の死。
ここらあたりが彼の転換点となったのではないかと思います。

14年の夏場所優勝後には、
優勝記者会見をすっぽかし、
観客が自分の相手に対して手拍子で声援するのを「自分は差別されていると感じる」なんて答えていました。

ワタシはこのことに関しては、
全く持って白鵬がちょっとセンシティブに考えすぎているのではないかという感想を持っていました。

白鵬がモンゴル人力士であるか否かなんていう事とは関係なく、
時の大横綱というものが「負ける様」というのは、
人々にとって「一番大好きな酒の肴」ってことなんだよ。。。。ってことです。

ワタシが覚えているところでは、
大鵬だって北の湖だって、
千代の富士なども負けると座布団が館内を舞って観客は大コーフン状態に陥っていましたもんね。
「常勝」を義務付けられた横綱が負けるというのはそういう事だし、
日本人のDNAには「判官びいき」というものが根強くあって、
「強いことが真理」という他国とは根本的に違うという事を、
師匠なり後援者なりが、白鵬にもっとよく含んで教えてあげたらよかったと思いますけどね。
日本には「敗者の美学」なんてものもあるんですから。。。。。


ワタシが思うに、
相撲界を何年も一人で守り続けていた「孤高の大横綱」である自分が、
なんで応援されないんだろう・・・・・・という少しの疑念から始まって、
これだけ「日本国民に理解されるように」やってきたのでもダメなのか。
自分はヒールなのか。。。。。。
そんなもんならば、仮面をはがして、
あとは自分が思うままに進もう。。。。。

そう思ったのかもしれませんね。
そしてその思いの根底には、
「勝つという事、強いという事こそが真理」
というものがあって、
外野が求める「品格」なんていうものは、
彼の気持ちの中では、横っちょに置かれてしまったのかもしれません。


そして翌15年の初場所では、
稀勢の里との一番に物言いがつかなかったことに関して、
場所後に審判部への苦言を呈した後、
「自分は差別されている」と発言して、
物議をかもしました。


それ以降は、
白鵬は「トラブル横綱」としての面が現れだしたのと同時に、
それまでほぼ皆勤で土俵を務めてきたのに、
度々休場することが目立つようになって「コンディションの問題」が取りざたされるようになってきました。

さらにこれと比例して、
荒い取り口が増えてきたように感じました。

ワタシが白鵬を「これはちょっと許しがたいなあ」と思っているのは、
まず一つは晩年に見られた立ち合い。

本来は受けて立つはずの横綱が、
相手に全然合わせずに、
自分十分になるためこざかしい仕切りを繰り返す仕切りの仕方が嫌いでした。

良くNFLなどフットボールで、
相手のディフェンスのオフサイドを誘うために、
わざとフェイクなどを何度も入れて攻撃側のQBが声を出すというやり方があるのですが、
白鵬の晩年の立ち合いはそれにそっくり。

下の番付の力士たちはそれに合わせることができず、
ほぼ立ち遅れて白鵬が”立ち合い勝ち”するというのが定番になっていました。

それとひどかったのが「サポーターを巻いた肘で相手にかます、かちあげという名のエルボー」と、
「頻発する張り手」でしたね。

張り手についてはほかの力士もやっているのでダメとは言いませんが、
少なくとも横綱相撲という感じではありませんでした。

そして何度か見せた、
土俵際でのダメ押し。
これも物議をかもしたこと、
1度や2度ではありません。

最後の6,7年は、
そういう事ばかりが取りざたされた、
大横綱にとっては寂しい晩年でしたね。

それでも、
「坊主憎けりゃ袈裟まで」
というようなマスコミの報道姿勢にも、
ワタシは辟易としてはいましたがね。


先場所千秋楽の全勝対決、
白鵬vs照ノ富士。

日の出の勢いの照ノ富士に対して、
白鵬が意地を見せて全勝優勝。

本来ならば勝った白鵬がほめたたえられてもいいはずが、
取り口がエルボーあり張り手ありだったので、
ほとんどの好角家が「照ノ富士はよくやった」という方向に行ってしまったのは、
白鵬にとっては残念だったと思いますね。

しかしこれが「落としどころ」になり、
どこで引退をするかを探っていた白鵬にとって、

・ひざの調子が悪い
・目標に置いていたオリンピックが終わってしまった
・自分の後継者として、同じモンゴル出身の照ノ富士が収まってくれた

ということで、
引退を決意したのでしょう。


白鵬の前の鶴竜も、
そしてその前の日馬富士も、
「相撲を取っての引退」でなかったところに、
何かしらの寂しさを感じてしまいます。

でも最後の場所が全勝優勝というところに、
白鵬の大横綱としての矜持を感じます。


ここまで、
功罪あい半ばと言われてはいるものの、
ひとりで角界を支え続けた功績は、
素晴らしいものがあったと思います。


名横綱とは呼ばれないと思いますが、
大横綱であったことは誰もが認めるところ。
本当にお疲れさまでした。

何やら日本橋に自分の部屋を建てる計画があるとのこと。
今後は後進の育成に、
力を尽くしてほしいと思います。

まあ、
今でも石浦、炎鵬、北青鵬という宮城野部屋の関取は、
すべて白鵬の内弟子とのことですから、
早々と隆盛を極めそうな気もします。

あの土俵入りが見られなくなるのは寂しいですが、
とりあえずNHKの解説席に座って、
相撲の解説をしてもらいたいですね。
他の引退力士がそうであるように。

”白鵬の目”がどのように土俵の解説をするのか、
注目しています。

饒舌な稀勢の里と寡黙な鶴竜の間ぐらいの、
相撲の肝を分かった解説、
お願いします。

北の富士さんも来年ぐらいには引退されるという事なので。

お疲れさまでした。


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