あぽまに@らんだむ

日記とか感想とか二次創作とか。

清らかなる呪縛(FF4セシゴル)

2020年03月23日 | スクエニ関連

 

 

 

「セシル×セオドール」です。腐的表現がありますので、閲覧には充分注意して下さい。

呪縛の呪文は一般的なので、制約的には「ロードス島戦記」のあと黒髪の方と同じ系統とお思い下さい。

大丈夫な方のみ下へスクロールしてご覧下さい。

↓↓↓↓

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<清らかなる呪縛>

 

バロン聖王であるセシルが、ギルバートの要請により復興されつつあるダムシアンに向かう事になった。
王妃であるローザは留守を預かる事になるが、公務は大臣達に全て指示を出してあるため問題はない。
また白魔法に関しては、現在ローザの右に出る者は居ない。
その為、現在セシルの次に神聖バロン王国で最強なのはローザと言う事になるため、心配はしていなかった。
寧ろ心配なのは、城の奥に囲っている愛する実兄、セオドールの事だった。
大臣達全員に細かく最後の指示を出し、セシルは足早に廊下を進む。
一昨日の夜から兄の顔を見ていない。
セオドールの優しげな面影が恋しかった。
光に透けると亜麻色にも見える栗色の髪は精悍な顔の輪郭を縁取り、
切れ長ではあるが大きな菫色の瞳はセシルを映すと濡れたように揺らめいた。
抱き締めると微かに震え、指で辿ると生娘のように跳ねる逞しい背中。
愛しい兄。
一日でも逢えないと心が軋んだ。
ずっと抱き締めて居ないと、手の中を擦り抜け、
月の光で泡となり消えてしまいそうで不安になった。
セオドールの部屋の扉が見えると、早く兄の顔が見たくて、
セシルは無作法にもそのまま豪快に開け放った。
扉が開く大きな音に、部屋の主であるセオドールは、刺客かと窓辺の椅子から急いで立ち上がった。
読書を楽しんでいたのだろう。
その手から分厚い魔道書が零れ落ちる。
急いで壁に立て掛けてある細身の剣を取ろうと手を伸ばすが、何故かその動きはぎこちない。
魔人と呼ばれていた頃のセオドールは、見上げる位の漆黒の鎧を身に纏ったまま、
丸太程の大剣を振り回し、まるで舞うかように優美に闘った。
力強く大地を踏み締めていた筋肉質の右脚は、
何故かホールドが掛かっているかのように動かず、床を引き摺っている。
漸く剣を握り締めた頃に、来訪者が実弟セシルである事に気付き、
剣に寄り掛かると安堵の吐息を漏らした。

「兄さん…、ごめん。ちゃんと声を掛けるべきだったね。早く顔が見たかったものだから…」

心無しか少し青褪めているセオドールに、セシルは今の彼の状況を再確認させられてしまい、
明日から数日間も彼を一人城に置いていく不安感が増してしまった。
セオドールは剣を元の場所に戻すと、やはり右脚を引き摺りながら近寄って来た。
彼自身もセシルに逢いたかったのだろう。
嬉しそうに顔を覗き込んで来る。

「少し驚いただけだ。そんなに気に病むことはない。今日はいい葉が手に入ったのだぞ」

自分もお茶にしようと思っていたのだとテーブルに向かうセオドールを慌ててセシルが追い駆ける。
今の彼は闘うどころか、走ることさえ困難なのだ。
そして得意とした高位の黒魔法も唱えることが出来ない。

ギアスと呼ばれる永遠に続く呪縛、或いは制約がある。

勿論、人間の行動を制約し、呪縛する訳なのだから重罪人にしか適用されず、
それも三国以上の王と裁判官立会いの下、何度も閣議を重ね決定される。
理由は至極単純明快なものだった。
神聖バロン王国で保護されていたとしても、魔人と呼ばれた男にセシルやローザ以外の兵が適う筈も無い。
セシルがバロンを離れた際、セオドールがまたバロンを制圧してしまう可能性が無いとは限らないと言うのだ。
月で眠る筈だったセオドールをセシルが無理矢理攫って来た事実をバロン国民は知らない。
闇の呪縛から解き放たれて、本来の優しい気質を取り戻したセオドールが国家制圧など企む筈は無いのだが、
猜疑心は過去の傷から育つもの。
必要ないと必死に訴えるセシルの主張は通らず、
セオドールに「右脚部に歩行困難の制約と、呪文詠唱の制約」が課せられる事になってしまった。
三人の王、五人の白魔道士が立会い、先日遂に刑が執行されたばかりだった。
歩行困難の制約は名の通り右脚を蝋で固めてしまったかのように、全く動かなくするもので、
セオドールは左脚のみで生活する事になった。
固まった右脚を杖替わりに引き摺って歩く。
彼の剣を封印する意味があるのだ。

「兄さん、お茶なら僕が淹れるから座ってて」
「少し痛むがファイア位唱えられる。大丈夫だ」
「だ~め!態々痛いことさせられないよ。お湯貰ってくるから待ってて」

呪文詠唱の制約は呪文を唱えると、その呪文の難易度に比例し身体中に激痛が走るという残酷なものだった。
沈黙は言葉自体も封じてしまう為、認められなかった。
セシルは憮然としている兄の頬に軽くキスすると部屋を出て行ってしまった。
一人部屋に残されたセオドールは急に部屋が広くなってしまった気がして落ち着かなくなる。
セシルが出て行った扉を暫く見詰めていたが、
やがて椅子に戻り床に広がったままの魔道書を拾い上げ埃を払った。
セオドールはゴルベーザであった頃の記憶は全てではないが、朧気に覚えていた。
その為ゴルベーザであった自分がバロン国にした事を把握し、理解している。
セシルが自分をバロンに囲うと言い出した時から遅かれ早かれこうなる事は予測していたのだ。
大衆の前で斬首にされても文句は言えない。
それでも神聖バロンはセオドールを受け入れた。
セオドールは胸に手を当て、そっと目を閉じた。

「生きて、セシルの傍に居られれば…後は何も望みはしない…」
「ううん。兄さんはもっと幸せになって貰うからね」

いつの間に戻って来たのか、セシルが目を閉じているセオドールの額に愛おしくて堪らないといったキスをする。
気配を殺して入室するなど聖王のする事かと説教しようかとも思ったが、セオドールは堪えた。

「この世界の誰もが敵になったとしても、僕が兄さんを護るよ」

セオドールは呆れたように溜息を吐くと「その台詞はローザ殿に言ってやるがいい」と呟いた。
終末の世界であったとしても世界最強の白魔道士に助けなど不要だと思うが、
セシルも敢えて指摘はしなかった。
悪の根源であるゼムスに操られ少年時代も青年時代も闇と共にあったセオドール。
友と呼べる者は剣と魔道書だけだったに違い無い。
そのいずれも奪われ、唯一の頼りが数年しか共に過ごしていない生き別れの実弟なのだ。
不安で仕方無いだろう。その兄を残していくのは忍び無かった。

「兄さん。ダムシアンに一緒に行こうよ」
「ダムシアン復興にダムシアンを滅亡させた張本人を連れて行ってどうするのだ。馬鹿者」

呆れたように大袈裟に溜息を吐いて、セオドールはセシルの額をコツンと爪先で弾いた。
ダメージなど受けてはいない癖、セシルは額を押さえ唇を尖らせた。
セシルの気持ちは分かる。
正直、敵と向かい合って、今の自分はまともに闘うことさえ出来ないだろう。
封じられた訳ではない為、高位の黒魔法も唱える事は出来る。
しかしその際に生じる激痛に耐えられる自信も余り無かった。
同じ制約を受けた囚人がファイラの魔法を詠唱しショック死したという話を心無い兵士がセオドールに漏らしたからだ。
しかし、自分のせいでセシルの立場を危うくするのは絶対に避けたかった。
不満そうな弟に苦笑を漏らす。

「私の事は案ずるな。無理はせん。大丈夫だ」

それでもと食い下がろうとするセシルの背中を押して部屋から退出させる。
本当はもっと逢って話をして居たかったが、明日からの公務の妨げになると危惧し、
セオドールは言葉を呑み込む。
ただ何事も無く無事に帰って来てくれればいい。
それだけを願った。
その間の自分の事など何ともなると全く気にも止めて居なかった。
ドアの向こうで暫く兄の名を呼んでいたセシルもやがて諦めたのか辺りは静寂に包まれた。
扉を気にしていたセオドールも小さく安堵の息を漏らすと脚を引き摺りながらベッドに辿り着き、静かに腰を下ろした。
見えない闇は徐々にセオドールの気付かない処で息衝き、
聖王の居ぬ間にその手を伸ばそうとしていた。
セシルの出立は明日。
動かない足をベッドに乗せ仰向けになるとセオドールは暫しの眠りに堕ちていった。


<了>

--------------------------------------------------------------------

続きはR18にしようかと思っていた作品ですが続きません!(笑

 

 

 

 

 

 


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« もっと上手な甘え方(茅賢) | トップ | 言葉の替わりに温もりを(京... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

スクエニ関連」カテゴリの最新記事