あぽまに@らんだむ

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淡い夢に消えて(FF4セシカイ)

2020年04月04日 | スクエニ関連

 

 

これはFF4セシカイのSSの再掲です。

ダークなパラレルなので、迷ったのですが私がセシカイを書いた最初の作品なので、

再掲する事にしました。

考えれば私にとってのセシカイの原点みたいな作品です。

セシルは元暗黒騎士なのもあって、ちょっとおかしい処があっていい気がします。

子供心に暗黒騎士が聖騎士なんて嘘でしょと思ったものです。

腐的というかかなりダークなので、大丈夫な方のみ下へスクロールしてご覧下さい。

↓↓↓↓

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<淡い夢に消えて>


月の地下渓谷。
クリスタルの床の階層に降りた途端、敵の強さが半端じゃなくなった。
MPの都合上、エンカウントする度に戦闘をする訳にも行かず、自然と逃走を繰り返す事になる。
それでもHPの少ないリディア、ローザ、エッジの順番で倒れてしまう。
元々HPの高いセシルと、HP+50%のアビリティを持っているカインは、
生き残って最後のセーブポイントまで何とか戻って来た。
この場には敵は入って来ない。
カインは大きく安堵の溜息を漏らすと、やっと慣れて来たホーリーランスを床に突き刺し、セシルを振り返った。

「こんな最下層近くでアイテム消費は避けたい。セシル。三人をレイズで生き返らせてくれ」

話し掛けながらコテージを張る準備をする為、カインは邪魔なドラゴンヘルムを脱いだ。
金糸のような長いカインの髪がぱらりと深碧の兜から零れ落ちる。
アイテム入れからコテージの布を取り出しながら、返事のしないセシルを振り返る。
セシルは何をする事もなく、じっとカインを見詰めていた。
カインは不審に思いつつもセシルを睨み付ける。
早くローザを生き返らせ、残る二人を休息させなくてはならない。
リディアは成長したとはいってもパーティでは一番体力が少ない。
エッジは一番年長とは言え一国の王子なのだ。
優秀な忍者ではあるが、セシルやカインに比べれば女性陣と同じ位の体力しか無い。
要するに持久力が無いのだ。
早く安全なコテージの中で休ませてやりたかった。
いつまで経っても動こうとしないセシルにカインが痺れを切らした。

「聴こえなかったのか?早くローザを生き返らせろ。もう真夜中だぞ?
彼女の食事も食べたい」

動き易いようにドラゴンメイルも脱ぎ、軽装になるとカインはさっさと自分の役割であるコテージを立て始めた。
MPの殆んどないカインは魔法によるサポートが出来ない。
エッジ程の素早さも無い為、アイテム係にも向いていない。
その為、自分に出来る力仕事やレベルハントなどのアビリティを付ける等、進んで行った。
今も魔法やアイテムを器用に使えない状況に、出来る事を必死にやっているのだろう。
本来、カインは生真面目で優しい男なのだ。
ローザの気持ちを思い、親友であるセシルを思い、自分の気持ちを隠し通して来た為に、
ゼムスに付け入られた。
純粋に人を想う気持ちを悪用されたのだ。
セシルもローザも傷付いたが、一番傷付いたのはカイン当人なのだ。
コテージを立て終わり、その強度を確認すると、カインは食事の用意を始めた。
勿論自分では簡単な食事しか出来ないので、生き返ったローザが始め易いように器具の準備だけをしている。
しかしいつまでも経っても背後から自分を見詰めているセシルに不安になってくる。
カインは動きを止めた。

「セシル…。お前…どうしたんだ?何を考えてる。早くローザ達を…」
「そんなにローザが好きなのかい?」

カインが皆話し切る前にセシルが会話を遮って来る。
思い詰めた表情にカインは憤慨しつつも言い返せず絶句する。
勿論、カインはローザが好きなのだ。
セシルがローザと出会う前から、ずっとカインはローザだけを見詰めて来た。
ローザがセシルを愛してもカインはローザをひたすら愛し続けた。
そして純粋な恋心と誠実に友を想う気持ちに苦しんで来た。
ローザを好きだと認めるのは、裏切りの罪を思い出させる。
聖なる筈の恋が罪に繋がる。
ローザへの恋を責められている気がした。

「セシル…俺は…」
「じゃあ、僕の事はどう思っているんだ」

カインはセシルの意図が分からず悲痛そうな表情のまま、見返す。
孤児同士、士官学校時代からずっと競い合って来た、ライバルであり、親友だと思っている。
大事だからこそローザへの恋に阻まれ苦しんで来たのだ。
ゴルベーザに操られ、セシルを欺き苦しめた自分を今でも許せない。
だからこそセシルの闘いに協力する為、月まで付いて来たし、
そんなセシルを想うローザを見守るつもりで居たのだ。
しかしその思いを言葉に出すにはカインは不器用過ぎた。

「親友だと…思っている」
「でも裏切った。僕を殺そうとした」

二人切りだからだろうか。
セシルは容赦無かった。
カインは真っ青になってガクリと膝を落とす。
確かに今迄はゴルベーザと名乗っていた兄セオドールを操っていたのが、
ゼムスであると突き止め必死になって月の奥底までやって来た。
最下層にゼムスがいる事が分かり、最終決戦まで後少しなのだ。
わだかまりは少しでも無くしていきたい。
そう思ったのだろうか。
優し過ぎるローザや、感情豊かなエッジ、傷付き易いリディアが居ては、
此処までセシルが冷酷に話せないだろう。
カインは自らの身体を抱き締め項垂れる。

「悪いと…思っている。謝って済む事じゃない事は…良く分かっている。
だから、俺は此処まで付いて来たし最後までお前達に協力するつもりだ。だから…」
「でも、この闘いが終われば、カインは僕の前から逃げる」
「そんな事…!」
「逃げるだろ?」

真っ青な水底のようなセシルの瞳が真っ直ぐにカインを見下ろしている。
カインは魅入られてしまったかのようにセシルの目を見詰めていた。
ゆっくりとセシルが近付いて目の前で跪く。
膝を付き、座り込んでしまっているカインの頬を、そっとセシルが撫でる。
セシルのプラチナのような銀髪がさらさらと目の前で揺れた。
色素の薄いセシルは、まるで月の精のようだ。
幻影のように美しいとは、まさしくセシルの事を言うのだろう。
カインは、ぼんやりと城の女官達がそう噂していた事を思い出していた。
この闘いが終わった後の事など考えても居なかった。
しかしバロン国王亡き後、主の居ない国を立て直すのは、聖騎士であるセシルが相応しいだろう。
そしてその傍らには美しき白魔導師ローザが王妃として寄り添うのだ。
そんな二人を自分は毎日見て暮らせるのだろうか。
嫌、一秒とて耐え切れないだろう。
どんな顔をしていいかさえ分からない。
カインは苦しげに目を伏せた。
それが答えであるかのように。
セシルは微苦笑した。

「否定しないんだ。…でも、カイン。僕は君を手放す気なんて無いよ」

カインは顔を上げる。
何故か嫌な予感がする。
伺うように探るように、カインはセシルを見詰めた。
セシルはうっとりと微笑むとカインの額にそっと口付けた。

「例え君がローザを好きでも、僕は君が好きなんだから」

カインは目を見張る。
今セシルは何と言った?からかっているのか、本気なのか、カインは急にセシルが分からなくなる。
嫌、本気である筈が無い。
ローザが攫われ再び戻って来た時、あんなにセシルは喜んだでは無いか。
ローザが居なければ駄目だと言っていたではないか。
セシルもローザを愛している筈なのだ。
嫌、そうでなくてはならない。
カインは幼い子供のように何度も首を横に振る。

「セシル…からかっているなら、止めろ。嫌…こんな冗談は止めてくれ。
ローザはお前の事が好きなんだ。
お前だって、ローザの事を愛しているんだろう?
俺のした事で怒っているのなら、何度でも謝る。だから…こんな冗談はもう…」
「冗談なんかじゃない。小さい頃からそうだ。僕はカインが一番好きだ」

カインはもう絶句するしか無かった。
セシルが分からない。
こんな事が無ければ、セシルは暗黒騎士として、自分は竜騎士として、
バロン国を共に護っていく親友同士だった筈なのだ。
何とかその本心を探ろうとして、必死に蒼い瞳を見詰める。
しかしその青い炎は揺らぐ事なく、真剣にカインの薄い水色の目を見返して来る。

「カイン、考えてくれ。君が好きなのは本当にローザなのか?」
「何言って…!俺の事だ。俺が一番分かっている!」
「僕の気を引きたくて、僕のものが欲しくてローザを好きだと思い込んでいるんじゃないか?」
「セシル…、いい加減にしてくれ」
「君が本当に好きなのは僕なんだ」
「セシル!もう何も言うな!聞きたくない!」

カインは耳を塞ぎ立ち上がるとセシルに背を向け、立てたばかりのコテージに入って行った。
後ろ手に天幕を閉じるとその場に崩れ落ちる。
幾ら気丈なカインでも、セシルの言葉に翻弄され続け、とても立っていられなかった。
セシルはどうかしている。
長旅と度重なる戦闘で気が動転しているのだろうか。
それとも月の民の血を引く者として、ゼムスの罠に陥り、操られてしまったのだろうか。
カインは魔法を使う術も知識も無い。
竜に乗り、敵を槍で突き殺すだけだ。
軽口を叩いてくれるエッジも無邪気に微笑んでくれるリディアも、共にいるだけで安らぐローザも今は居ない。
カインは徐に立ち上がるとアイテム袋に歩み寄った。
もう、セシルに頼ってなどいられない。
フェニックスの尾で皆を生き返らせてしまおう。
フェニックスの尾は充分にあるが、もし足りなくなってしまえば、
またこのセーブポイントのある部屋からなら、ローザのテレポの呪文かアイテムの非常口で、
月の表面クリスタルパレスの前に戻れる。
しかし幾らアイテム袋を探してもフェニックスの尾は1つも見当たらなかった。
そればかりか非常口も無い。
これではセシルにレイズの呪文を唱えて貰い、ローザを生き返らせて貰うしか帰る術が無い。
カインは青褪め、コテージの天幕を開けた。
外へ飛び出そうとした目の前に虚ろな人形のようにセシルが立っていた。
ぎくりとしてカインはコテージ内に後退る。

「何を探しているんだい?カイン」

カインは眉間にシワを寄せてセシルを見下ろす。
幾分かカインの方が背が高い。
竜騎士としてウェイトはカインの方が軽いのだが。
カインはセシルを刺激しないよう、必死に言葉を探して用心深く話す。

「アイテムが見付からない。ローザを生き返らせてくれ。セシル。一端月の表面に戻ろう」
「レイズを唱えるMP、実はもう無いんだ」
「何言って…!?お前、先刻MP200位残ってるって…」
「そんな事言った?覚えてないな。でも本当に無いんだ。
だから、カインと一晩、一緒に寝ないと…MP回復しないよ。二人切りで…ね」

カインは唇を戦慄かせた。
セシルの背後、バラバラに切り刻まれたフェニックスの尾らしき羽根が赤い炎に呑まれていくのが見えた。
一瞬それに目を遣るが、セシルに気付いた事を知れるのが怖くてカインは、怯えながら顔を伏せた。
怖い。
セシルが怖い。
コテージの横には三人の骸。
そして自分を好きだと言うセシルと二人切りで一晩過ごさなくてはならない。
カインはコテージの外で立っている自分のホーリーランスを見た。
セシルはすぐにカインが何を考えたかを理解した。
外へ出ようとしたカインの手首をすぐに掴んだ。

「死のうなんて…思ってないよね、カイン。
もし君が自ら死を選んだとしても、僕は君一人だけを何度でも生き返らせるからね」
「…セシ…ル…、許…てくれ…。こんなの…もぉ…」
「何を謝るの?カイン。僕はただ、君を好きなだけなのに」
「止め…てくれ…。正…気に戻っ…てくれ…セ…シ…」

何処で間違ったのだろうか。
何処で狂ってしまったのだろうか。
カインには分からない。
セシルの手がカインに伸ばされる。
カインの薄いアイスブルーの瞳から水晶のような涙がポロポロと流れ落ちる。
白磁のような滑らかな頬をセシルの掌が這う。
何度か頬を行き来すると唇に親指が当たり、カインは電流でも当てられたかのように、
びくりと身体を痙攣させた。

「僕は正気だよ。カイン。寧ろ、今迄の僕が全て、夢だったのさ」

消えてくれ。
カインは溢れて止まらない涙を床に落としながら、必死に首を横に振る。
こんなの全て嘘だ。
カインは何度も首を振る。
全部夢だと誰か言ってくれ。
カインは叫んだ。
しかしその月の光のような長い髪もセシルの細い指に絡み取られ、その淡い身体は闇に呑まれていった。


<了>

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ちょっとダークな雰囲気で暗転します。
DQで言えば「昨夜はお楽しみでしたね」的に明るく終わって下さい。

※再掲するに当たって訂正と校正をしています。ご了承下さい。

 

 

 


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