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加藤直樹「TRICK 「朝鮮人虐殺」をなかったことにしたい人たち」(ころから)
関東大震災発生後数日間にわたり、多くの朝鮮人が朝鮮人であるだけの理由で殺されました。しかしネット上を中心に朝鮮人虐殺否定論が流布しています。筆者は朝鮮人虐殺否定論のルーツが、下記の本にある事を指摘します。
工藤美代子・加藤康男夫妻 著
・「関東大震災「朝鮮人虐殺」の真実』(産経新聞出版)
・「関東大震災「朝鮮人虐殺」はなかった!」(ワック)
※以降「なかった」と略記
「なかった」の問題点は、事実誤認による朝鮮人虐殺否定論ではなく、事実であることを知った上であえて朝鮮人虐殺は無かったと主張していることにあります。読者に故意に嘘の情報を広めることが目的。要するに悪意を持った「TRICK」なのです。著者はその「TRICK」には7つのパターンがある、と主張しています。
①震災直後の流言飛語情報を「証拠」として取り扱う。
例えば
・朝鮮人が暴動を起こした。井戸に毒を投げこんだ。
・朝鮮人テロリストが爆弾を投げた。
・etc
②朝鮮人暴動は政府によって隠蔽された、と主張する。
③朝鮮人虐殺による犠牲者数を根拠のない集計で極小化する。
④史料を都合よく切り貼りして論旨をねじ曲げ、朝鮮人暴動がの根拠とする。
⑤史料の都合の悪い部分を削除し、朝鮮人暴動の根拠とする。
⑥権威のある文献に記載がないことを「参照」したことにして、朝鮮人暴動論を組み立てる。
⑦在野の研究者の著作を「かなり公の刊行物」と偽り、引用する。
要するに朝鮮人への悪意に満ちたヘイト本、トンデモ本です。しかし「なかった」の影響を過小に評価することはできません。「なかった」を情報源に、ネット上では朝鮮人虐殺否定論が一定の影響力を発揮しているからです。
腐ったリンゴが隣のリンゴを腐らせるように、誤った情報が拡散してゆきます。これを防ぐには、第一に正しい情報を広めることが重要です。
ただこれだけでは十分ではありません。そもそもリンゴが腐らないようにしなければならないのです。虐殺否定論の根底にあるのは我々の中に沈潜した在日コリアン蔑視です。これは各個人に帰すべきではなく、政治・国際関係レベルの問題です。韓国/北朝鮮との間で歴史観を共有した上で真の友好関係を築くことが絶対に必要なのです。
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