Are Core Hire Hare ~アレコレヒレハレ~

自作のweb漫画、長編小説、音楽、随想、米ラジオ番組『Coast to Coast AM』の紹介など

003-アキラ(後)

2012-09-16 23:17:45 | 伝承軌道上の恋の歌

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「シルシ君、昨日、学校来なかったね?」
 余った大量のビラを肩からかけたバッグに押し込んでいた僕にアキラが言った。
「ああ、学校が来なかったからな」
「…もう。今日は行くからね」
 僕達が並んで歩き出すと、アキラは僕の右腕に両腕を絡ませてきた。、もう僕にとっては何の感情も呼び起こさないけど。
「お詫びに今日はいい話持ってきたんだ」
「俺にとって、お前にとって?」
「驚くべきことにそれは両立するんだ。僕達の手と手が結ばれていれば。はい、これ」
 僕は目の前に差し出された、フリーペーパーの赤く囲まれた欄を見た。
「着ぐるみのバイト?」
「そうだよ。これで活動費稼ぐの。頑張れば懸賞金だって出せちゃうよ」
「こっちでもビラ配りか」僕はアキラに当てつける。
「いい、シルシくん?新しいことばっかりが素敵なんじゃないの。慣れていくことで増す愛着ってあるでしょ…」
 黙って歩き出した僕は、通り沿いの開くことのない店のシャッターの前で足を止めた。
「…これって…」
「シルシ君、どうしたの…?」振り返ってアキラが聞く。
 僕らの目の前に一面に貼られたポスター達。まるで現代アートみたいにヘッドフォンをつけたCGの女の子がびっしりと隙間なく並んでいる。でかでかと目を惹く文字で銘打つのは『デウ・エクス・マキーナ』。
「…何?これ、気になる?」アキラが聞く。
ぱっと見る限りよくあるイベントか何かの宣伝らしいが、普段なら気にもとめないだろう。大きな青い瞳、その片方の頬には回路図を思わせる模様が涙のように描かれている。僕の足をとめたのは髪だ。サイドを小さく結んだピンク色の髪。あの子と同じだ。一瞬、さっきの女の子の姿が二重に映してCGと重なる。『スフィア』。あの時彼女が口にしていた言葉が僕の頭の中に浮かんだ。 
「…その…アキラ、スフィアって聞いたことある?」
「知ってるも何もこれって『スフィア』のイベントの告知だよ?それがどうかした?」
「いや、さっき会った女の子がさ…」と僕はただそう言った。

…つづき

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