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遺された言葉

2021-05-11 06:06:00 | 日記
「ママのことをちゃんとみるんだよ」

父からこう言われた。自分の死期が近いのがわかっていたのだろう。
でもまだその時は、そこそこ父の体力は残っていた。

母はその頃はほとんど寝たきりと言ってよかった。ほとんどの時間は横になっていた。
そして身体だけでなく、精神も壊れていた。
でも起きてご飯は食べたし、トイレにもちゃんと行った。姉の言うことは聞いた。

今まで母の精神は悪い時も良い時も有った。
姉2人が結婚して家を出た後はひどかった。
でも父は母の精神的な問題に対して私にはこぼしたことはなかった。
どうしようもなく悪い時にも「精神病院には入れない」とだけ言っていた。
その頃の精神病院は、今とは違ってきちんと治療を受けられるところが少なかったらしい。

父は亡くなる数日前から、ベッドの脇に母が立つのをとても嫌がった。
母のあとの世話は私に任せたのだからもう勘弁してくれよ、という感じだった。


いよいよの時、上の姉が父本人に「お墓はどうする?」と尋ねた。
私にはとてもきけない。

「じゃあ、おばあちゃんのところに」と言い遺した父は、希望通り故郷の墓に入った。
聞いた姉に、私はずっと感謝している。

しかし母の希望は、姉夫婦の墓の隣に自分の墓を作ってもらいたいと言うことだったらしい。
それは母の死後姉から聞いた。墓を建てるお金も姉に託していた。

母は父のことが好きだった。自分だけを見て欲しかったのだ。長い間そう思っていたはずだ。
そうでなければ「お前に夫婦の何がわかるか!」と私に言って、仏壇から父の位牌だけを出して自室に持って行ったりしないと思う。
同じ墓に入ればずっと一緒に居られるのに。それは父の浮気相手には決して出来ない事だったのに、と思う。

でも親代りにお姉さんたちに育てられた母が、自分の子供であっても姉を親代わりに慕う気持ちも分かる。
それに姑と同じ墓に入りたくないとも私の小さい頃は言っていた。

1年ほど前に墓が出来たと姉から連絡があった。姉の家族と一緒に入る事になったという。
でも初めから母は本当は姉の家族と一緒の墓に入りたかったのではないだろうか。義兄の手前そう言い出せなかったのだと私は今は思っている。
姉のことも、姉の旦那様のことも、姉の2人の子供のことも、母は大好きだった。

母の遺骨はまだ姉の家にある。綺麗な祭壇には、行くと何時も花が飾ってある。
コロナが終わったら、みんなを集めて納骨するつもりでいるのだろう。
姉も母が好きなんだなあと思う。





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