音の夜

ピアノのおと


真っ白な鍵盤に、ぽつり　ぽつり　指を　落としてみる


　　ぽろん

　　ばらん

　　ぴろん

　　ころん


ときおり、黒い鍵盤も


　　たらん

　　きらん

　　ぴらん


　　ぱぁん・・・


ひびく

ひびく


ひろがって



そして。


いつか　消える　

音のふしぎ



「ここ」　で、始まった音は、

秒速で云えば、約340メートルで進んでゆき・・


そして、どこかの地点で、

消える



音は消えるから、人や動物にとって、幸せなのかもしれない



すべての音が、宇宙空間に有るように、漂っている、と、したら・・



新たに、絶え間なく発生する、あらゆる音につつまれて

私たちは、音によって、身体が振動し続けてしまうかも・・しれない・・？




でも。


消えてしまうからこそ、残したい音もあるのだろう。



だけど、それだって、きっと、永遠には、残らない。



いつか・・地球という星といっしょに、消える日が、来るはずだから。


　　＊　　＊　　＊


夜のなか。


しんとした中で、耳を澄ますと、「わたしの音」が聞えてくる。



それは、「わたし」が、生命のある、証拠。


私の、生命活動の、音。



　　　心臓のおと

　　　血液の流れるおと

　　　消化器官のおと



音は、生きている。


わたしは、生きて、いる。


　　＊　　＊　　＊


ふと、そんなことを、考えた、夜


　　＊　　＊　　＊


そして、いま。


Ray