こんな偶然

まだ　私が小学生だったころ。

だから、ずっと以前。


　　＊　　＊　　＊


ある日。

母のお買物に ついていって。



近くのスーパー。


西友だったか・・　ダイエーだったか・・



ダイエーは、あとからできたから、たぶん・・西友



家から徒歩


20分くらい



食品売り場



最後にお会計・・レジのあるところ



母が　お財布を開いて・・


「あら？」と、云うので


どうしたのかな？と思ったら。




「お金、足りるかしら？」　



えっ・・？

もし、足りなかったら、どうなるんだろう…？




少し・・店員さんの、はっとした表情


私たちのところだけ、空気の流れが止まったみたいになって




レジに現れた、代金の数字に目をやりながら

母は、硬貨を、ひとつ、ふたつ・・出してゆく・・



しばらくして。



「あら。　ちょうど、あったわ☆」



１ 円 足りない、とか、５ 円 足りない、とかではなく

100 円玉が 残った、とか、50 円玉が 残った、とかではなく


お財布の中身と、レジの数字が、ぴったり、同じ。



ぴったり賞とかいう、そんなイベントでも、あれば良かったのに♪



にっこり笑う母

店員さんも笑顔になって




良かった～　お金があって。



「お財布、これで、からっぽよ？」　と、私に向けて、広げてくれたお財布は

ほんとに、空っぽ。


「わ～　空っぽ。」


使い込んだ母のお財布は、硬貨の入っていたところが、黒々と　汚れていた




そして、空っぽのお財布は、なんだか、気持ちが良くて


触らせてもらったら、ぺったんこ。



軽くって


　　＊　　＊　　＊


こうして、いま、思い出してみると・・

銀行口座の、「０（ゼロ）」の文字より、あたたかな、気が、します。


そんな、以前のことを、急に、思い出したので・・　　Ray