麻里華さんはこの家によく来ていたのだろう。
「…それじゃあ、仕事場以外を見ても…いえ、倉庫とオミさんの部屋だけ見せて… 」
倉庫というのは物置部屋兼の俺の部屋らしい。
オミさんは慎重に、自分はドアノブにも触らず、麻里華さんにドアを開けさせた。
当然 俺の部屋に誰かいるわけはない。
麻里華さんが電気をつけて 中に入っていくと、オミさんは 、押入れの中を見てもいいよ、と言ったが、麻里華さんはそこで動かなくなってしまった
「ごめんなさい 。変なことして…」
いや、とオミさんは何か言いかけて、
「俺の部屋はいいの? 」
「うん。もう…本当にごめんなさい 」
そんなやり取りが続く中、カイさんは 応接室に残って、立ったままあらぬ方をぼーっと見ていた。
「変なことばかり言ってごめんなさい。私とつきあってるオミさんが、男の人となんて、ある訳ないものね 」
いや、お嬢様、あなた騙されてますから、とよっぽど言ってやりたくなったが…
いや、華島さんとオミさんのことで苦しむのは俺だけでいい…
オミさんがまた麻里華さんに、もう遅いから送ってくよと言うと、麻里華さんはほっとした表情でうなずいた。