「じゃあ ダイキ君はどうなの?」
笑いながらフクちゃんが尋ねてくる。
「…育ってます…」
「…今持ってる? 」
とオミさんに言われ、スマホを見せると、やっぱり育っている。
もちろん写真の中のオミさんは写した時のままだが、数日前からまた肩に手が戻り、オレンジ色のもやに黒が混ざってきている。
「誰にも霊障みたいなものが出ていないのがまだ幸いだと思うんですが…」
でも 誰にもこの先は分からないわけで…
オミさんは落ち着いて、
「フクちゃんにも 何も起こってないんでしょ?」
「うん。さっきの 大人 バンドの代打くらいかな 」
と、笑いに変えてくれたけれど…
ここのところ、もうカイさんもオミさんに 削除しようとは言わなくなっており、オミさんは、俺のスマホの中の変化を楽しみにしている。
オミさんのところの変化と俺のところのと、変化がほぼ同じになったからで、忙しい時は自分のスマホで見るのが面倒だからだそうだ(罰当たり?)。
消失が心配で、俺は念のためパソコンにも写真を入れているが…
お祓いはしていない
心霊写真が変わっていくという不気味なこと…
そのために誰かに何かあったらどうするのかと、撮ってしまった人間だけに責任を感じていたが…
少し早く落ち着きを取り戻した らしいカイさんの様子が、ふと目に入って俺はあっと気づいた。
オミさんを恨んでいる人…
その恨みが強い人…
そして 近くにいて…
写真を削除することもすすめていたし…
でも自ら生き霊を飛ばすとは思えない…
でも カイさんなら飛ばせるかも…
でもそんなこと…
「ダイキ、 どうしたの?」
俺の視線に気付いたカイさんがごく自然な様子で言ってくる。
「いえ、これはどこまで育つのかなって思ったので…
無難な返事を返すしかなかった。
〈第一章 了〉
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