「カイさんに何か縁のある神社なんでしょうか?」
「いやあ、親父たちからも聞いたことないなあ。でも何か親近感は覚えるよね」
他の字はもう読めなかったので、気を取り直して、検証というか下見というかを始めた…と言っても俺の機材の使い方をチェックしてもらう時間の方が多かった。
実はカイさんたちが思っているほど心霊チャンネルを見ていない俺なわけだがカイさんは丁寧に、夜の撮影で先を歩くメンバーの写し方などを教えてくれる。
「編集の練習も頑張らないと…」
俺のつぶやきに、カイさんは笑顔で応えてくれた。
「この先は夜の本番だなあ。でもお社のほかに特に何もないからなあ…あとはオミに相談だな…」
ということで、俺たちは帰り支度を始めた。
帰りも骸骨や白い人は現れなかった。
遅いお昼は、俺のリクエストでファミレスのハンバーグ。
ちょっとお高めの店にカイさんは連れていってくれたが、さすがにハンバーグセットは美味しかった。
お皿を下げてもらったところで、40代くらいの素敵なマダムと中学生くらいの女の子がカイさんのところに来た。
「あの、〈礼霊ず〉のカイさんですか?…」
母娘でカイさんのファンなのだという。
お母さんまで少女の顔になっている。
「握手していただいてよろしいですか? 」
「はい、ありがとうございます…来週新作配信予定なので、よろしくお願いします! 」
「はいっ! 」
お母さんの方が舞い上がってたな…
目の前でカイさんの人気を見せつけられてしまった
カイさんもオミさんと一緒に心霊イケメン四天王に入ればいいのに…
それは…華島さんとの思い出にも似ていて…
そこに運ばれてきた、カイさんの可愛いイチゴパフェを見ているうちに俺は、はたと気づいた。
オミさんとバンドをやっていたカイさんなら、華島さんのことを何か知っているかも…それに俺の本当の入社理由は知らないかもしれないし…
「そういえばカイさんは、いつ頃バンドをやってたんですか…?」